ひと掻き ひと蹴り (13)

〜 その他もろもろ 〜

2010.07.30

  

 

■ 実はどんな体勢からでも速くできる

以上で、『ひと掻きひと蹴り』〜『浮き上がり直後のストローク』のすべての訓練テクニックを記述した。

本当は、誰にも教えたくないほどの重要なヒント(重要な感覚)も、すべて公開した。

(ちなみに、『ひと蹴り』のテクニックに関する記述がないのは、平泳ぎの選手が『ひと蹴り』の部分で困る事はないからだ。)

 

しかし、実は、うまくなってしまうと、どんな体勢からでもドルフィンキックは効くし、うまくなると、『膝をほとんど曲げず、足先でちょこっと打つドルフィンキック』まで使えるようになる。

ちょっとターンに失敗して、おかしな姿勢から『ひと掻きひと蹴り動作』に入っても、その体勢に合わせて動作できて、うまく進める。

 

例えば、『第7章 Step 3』で訓練した方法のように、ドルフィンを打ち込む前に少し潜らなくても、うまくドルフィンキックが効くようになってくる。

飛び込んだ直後のフラットな位置からでも、うまくドルフィンキックが効いて、ギューン加速できるようになる。

 

うまくなった現在でも相変わらず、私の水中連続ドルフィンキックやバサロはまったく効かないし、クロールのビート板キックは足が棒状になるし、クロールの6ビートは25Mも使えないヘッポコキックだ。

しかし、これも最近(2010年7月)、微妙に効き始めてきていて、飛び込み後に2〜3回打って浮上してくるドルフィンキックだけは、効くようになってきた。

 

つまり、ここに書いてきた訓練手順書は、

『理論とともに、ヘタクソがうまくなるための感覚イメージを記述した』

もので、『上達の手がかり』となる情報を提供したに過ぎない。

 

うまくなった後や、元々うまい人たちは、自分の体で感じる感覚だけで無意識に動作し、多少おかしな姿勢から動作し始めても、難なく加速していける。

 

理論にしがみ付くのは良くない。

理論と感覚のバランスを、イメージを使って取るのが重要だ。

 

 

■ 私がうまくなるきっかけを掴んだ伏線

私の『ひと掻きひと蹴り』が速くなり始めたのは、2010年2月で間違いない。

それまでは、速くなる気配すらもなく、ひと掻きひと蹴りに関しては、諦めの境地でいた。

 

ただ、速くなった現在、振り返ってみると、2010年2月よりも前の事が伏線になって、ひと掻きひと蹴りが速くなった事に気付く。

 

 

【1】 伏し浮きが出来るようになった

伏し浮きの重要性を2001年の冬に知って取り組み始め、8年の歳月を経て2009年末に、ついに、完璧に出来るようになった。

この事で、新型のストリームライン姿勢が作れるようになっていた。

 

【2】 水中で長く伸びる事を知った

ひと掻きひと蹴りが速くなる1年前の2009年2月にバイオラバー水着を初めて着てレースをした時、最初の25Mのターンで壁を蹴った時、

グーーーン

と伸びる感覚を、生まれて初めて知った。

それまでは、壁を蹴ってすぐに『ひと掻き』を開始していたが、バイオラバー水着によって、大きく加速した事で、

『ストリームライン姿勢を保って加速を維持する感覚』

を体が無意識に感じ取って、それ以後、ターン後の水中で、ストリームライン姿勢を長く取るようになっていた。

 

 

この2点、つまり、

伏し浮き姿勢の時の『重心が、水に浮く感覚』と、『その感覚でストリームライン姿勢を作れた』

という伏線が事前にあって、それが、『高速ひと掻きひと蹴り』の発見に繋がった。

 

つまり、伏し浮きが出来ない人は、ターンのテクニック云々の前に、まずは伏し浮きを出来るようになって、新型のストリームライン姿勢を作れるように努力する必要がある。

その事を甘く考えてはいけない。

 

 

■ 長く潜るのに肺活量は関係ない

高速ひと掻きひと蹴り』では、『ヘッポコひと掻きひと蹴り』と違って、水中に潜っている時間が長い。

おそらく、1.2〜1.5倍くらい長い時間、潜っている。

 

『苦しくて長く潜れない』という人は、それなりに多いと思う。

そして、『もっと持久力を鍛えないと、ひと掻きひと蹴りで潜れない』と考えていると思う。

 

しかし、持久力は潜水時間と関係はなく、肺活量も、持久力や潜水時間とは関係ない。

 

私の出身高校の水泳部は、2008年北京五輪代表だけでも2名の出身者がいるほどの強豪校で、数十年にわたって競泳有名校だ。

(ちなみに日本代表前ヘッドコーチ、現監督の上野先生は、私が高校生の時の水泳部ヘッドコーチ。チーム北島でマッサージ師をしている小沢さんは、私の1つ上の先輩で、新入部員指導で私を担当してもらい、寮での電話の取り方など、いろいろ指導してもらいました(^.^))

風邪をひくだけで頭を丸める必要があるほど、練習に厳しい環境であったため、練習量も豊富で、練習不足などという事は、まったくない。

 

その水泳部で、当時、肺活量を計測した事があった。

私は4000ccくらいで(3700ccか、4200ccだったような気がする)、一般成人男性並みだった。

 

8000ccまで計れる機械を振り切って、泡がブクブク吹き出てくる2歳上の先輩がいたが、インターハイには出場できなかった。

 

インターハイの1500M、400M自由形で優勝した遠藤さんという2歳上の先輩の順番になって、周りは、

『きっとすごい数値が出るはずだ!』

と、ワクワクして見ていたのだが、なんと、たった4000ccしかなかった。

 

長距離選手は、練習も別メニューで、一番泳ぎ込む時期で、1日20000M近く泳ぎ込んでいて、しかもインターハイチャンプともなれば、持久力は相当すごいはずだが、肺活量は一般成人男性並みだった。

 

『インターハイにいけない選手が8000cc以上の肺活量なのに、インターハイ長距離チャンプの肺活量が、一般人並み』

である事に、高校生の安い脳みそは、意外性を感じた。

 

よく考えれば意外でもなんでもなく、当たり前なのだが、

肺活量は、身長(体格)に比例する。ただそれだけの事』

なのだ。

 

インターハイチャンプの遠藤さんも私も、身長は170cmくらいで、細身。

8000ccを振り切った先輩は、身長190cm近くて、若手プロレースラーのようにでかく、筋肉質な体だった。

 

それ以外の選手も、肺活量は、競泳成績に何の関連もなく、体格に比例していた。

 

つまり、持久力は、『肺から取り込んだ酸素を運搬して筋肉に届ける能力』であるため、たくさん空気を吸う事は関係ないのだ。

 

よく考えれば当たり前だ。

ビニール袋を被っても直ぐには死なない事からも分かるように、吐いた息の中にも、酸素はたっぷりあるし、肺は胸の中でいっぱに膨らんでいるのだから、そのサイズは、肋骨のサイズに依存するはずだ。

 

私も、ターンの後に長く潜る事は、つい1〜2年前まで、非常に苦手で、ターンの後は苦しくて、すぐに浮上せざるを得なかった。

これは、とても不思議なのだが、ひと掻きひと蹴りの上達に比例して苦しくなくなった。

 

『ギューン加速の快感』が苦痛を和らげているような気がするが、

ターンの姿勢や動作に無駄が減って、その分、楽になった面もあるように思う。

 

少なくとも、『長く潜れるようになったのは、持久力が付いたから説』だけは、ありえない。

 

なぜなら、私の高校時代は、一日15000Mも練習をしていて持久力はバッチリだったはずなのに、ターン後は6〜8Mそこそこで浮き上がっていたが(しかも、苦しくてたまらなかった)、

今は、ターン後、蹴伸びだけで5M以上進み、トータルで11〜12M近く潜っているのに、一日の練習量は2000M程度しかなく、泳ぎ込みや、持久力練習はしていない(しかも、さほど苦しくもなく、むしろターンを楽しみにして泳いでいる)。

 

『ターンが苦しくて長く潜れないから、ひと掻きひと蹴りも適当にやらざるを得なくなっているから、練習で持久力を付けてから、ターンの練習(ひと掻きひと蹴りの練習)をしよう』

と考えているのなら、方向性が間違っている。

 

『伏し浮き姿勢に重点を置きながら、日々の練習における泳ぎの中で、意識を持って、ターンをしていく』

のが、正しい方向だ。

 

※※ 備考 ※※
運動中の呼吸は、酸素を吸う事はもちろんだが、二酸化炭素を体内から吐き出す事が重要な目的の1つだ。

100M走で息を吸わずに走る(息を吐きながら走って吸わない)事は出来るが、口にガムテープを張って、息を吐き出せないようにすると、苦しくて走れないのは有名な実験で、体内の二酸化炭素を吐き出せないのが苦しいのだ。

 

また、肺に穴が開くと肺が膨らまなくなる肺気胸という病気からも、肺は膨らんでいて、それを妨げているのが骨(肋骨が作る空間サイズ)であるのは明白で、持久力と肺活量に関係はないのは、理論的に考えて合理的だ。

 

ちなみに、空気中の酸素はわずか20%で、78%は窒素だ。二酸化炭素に至っては、1%以下でしかない。(高校で習う)

 

たまに、タイヤショップなどで、

『タイヤに窒素を充填します!』

なんて言って売ってるけど、F1レースじゃないんだから、一般車のタイヤに窒素を充填するなんて、詐欺まがいなんだよね。

なんせ、元々、空気の8割が窒素なんだから、タイヤの中は元々、ほとんどが窒素。

タイヤのゴムは、柔らかい風船のようなゴムじゃないんだから、窒素100%に充填なんて、してくれないよ。

ヘタすりゃ、普通の"空気入れ"で入れられちゃっても、わかんない。

 

『天然成分』もそうだけど、科学を知ろうとしない人は、こういうのにすぐ騙される。

天然のキノコ食って死ぬ人もいるし、天然のうるしで皮膚がかぶれるといった、誰でも知っている情報を思い返す事もせずに、

『天然成分(植物成分)』 = 『安全』

と勝手に解釈して、無用な物を、イメージで売りつけられている事に気付かない。

 

『天然水』って売ってるけど、『天然じゃない水』って何?スペースシャトルの打ち上げで、水素と酸素を2対1で燃焼させてお尻から白い水蒸気をモコモコ出してる、あの水の事かな?・・・そもそも、天然じゃないものってなによ?・・・・・いかがわしい宗教でも水を売ってるから、天然って、宇宙や神様の事かな??・・・・

 

自分で疑問を持ち、自分で深く考察する事で、速くなるチャンスが広がり、その思考は視点を増やし、『裏の裏である表』と、『表の表』は、同じ『表』でも視点が違う(切り口が違う)事を知る事になる。
※※※※※※※※