ひと掻き ひと蹴り (11)

〜 手のリカバリー 〜

2010.07.20

  

 

■ 手の戻し方

もう、手のリカバリーを説明する必要はないはずだ。

ここに書いてきた事は、『Step X』となっている事から分かるように、理論書ではなく、訓練手順書だ。

 

手を引っ張る動作までで身に付けた感覚で、もう、十分に感覚が研ぎ澄まされている。

ヘタクソだった時には感じなかった感覚を感じるようになっているのだから、手のリカバリーもその感覚を使って、最も抵抗が少なく、最もスムーズに戻せる方法をすぐに見つけられる。

 

ギューン加速の時に感じた『1本の水流』の底の部分を、手の平でやさしく、なでるようにして戻せば、抵抗を最小限にして手を前に戻していける。

 

リカバリー

 

手首は曲げず、手の平はまっすぐのまま、水流を感じながら』だ。

(胴体に手は触れない。水流の底をなでる)

 

手の平で水流を感じて、出来るだけ抵抗が発生しないように戻そうとすれば、自然と、『肩を引っ張り上げるような動作』も生まれる。

 

ほら、北島君も、そうしてる。

 

2008年北京五輪 200M平泳ぎ決勝

 

 

■ 昔、良く利用されたリカバリー

昔(10〜20年前。1984〜2000年頃)のオリンピックの映像を見ると、

『スタートはヘタクソで足から落ちてるし、泳ぎ方もヘタクソ。なんで、当時は、うまい選手のように見えたんだろう』

と、必死にやっていた自分の現役時代を思い出して、不思議でたまらない。

 

感情的には不思議なのだが、理論的には明白で、

『20年前のオリンピック代表選手のタイムでは、日本選手権の標準記録すら切れない』

のは、明らかにテクニックが進化し、より高度なテクニックを、みんなが使っているからだ。

 

ひと掻きひと蹴りの時の『手のリカバリー』も、

『抵抗を減らすために、できるだけ体の近くを戻す』

と、昔から言われていた。

 

間違いではない。広い意味では、今でも正しい。

 

ただ、当時のリカバリーテクニックは、『突き詰め度』が甘く、漠然としていて、こんな手首(うらめしや〜手首)になるような手の戻し方をする選手が多かった。

 

 

『手首を曲げず、手首をまっすぐしたまま、水流の底をなでるようにして戻す方式』を知ってしまうと、

『なんで、こんな抵抗の多いリカバリーを採用していたのだろう?ありえない』

と思ってしまうのだから、不思議だ。

 

※※ 備考 ※※
感情的には不思議だが、感覚的には明確な理由がって、『伏し浮き姿勢』が原因だ。

伏し浮き姿勢を意識しているか、していないか(感じているか、感じていないか)の差だ。

 

『うらめしや〜手首』では、胸から上に手を上げる時に、背骨を大きく引く(起こす)必要が出てきて、この姿勢の崩れから、体が一気に止まってしまう。

『うらめしや〜手首』でリカバリーを行うと、伏し浮き姿勢の感覚が大きく崩れて、感覚的にぜんぜんしっくり来ない(水流に乗る感覚がなくなり、水にどっしり乗っかってしまう)

 

一方、水流の底をなでる方式では、胸から上に手を上げる時、肘を使って(連動して肩も使う)、手を内転させるような感じで上げるため、背骨の動きが小さくて済み、『伏し浮き感覚(水流に乗っている感覚)』の崩れが最小限で済む。

 

伏し浮き姿勢(水流に乗る感触)を出来るだけ崩さないようにすると、自然とリカバリー方法が決まってしまう。

 

ほら、北島君のリカバリーも、お腹がへこんでるでしょ。

『伏し浮きのテクニック』で十分説明しているけど、伏し浮き姿勢(重心を浮かした状態)を維持しようとすると、お腹が必然的にへっこむのよ。

 

『へっこませたら、浮く』んじゃないよ。

『過程』と『結果』を逆にすると、『結果の成否も逆』になるから注意が必要で、

『浮かせたら、へっこむ』んだよ。

『重心の浮かせ方の違い』が『お腹のへっこませ方の違い(筋肉の使い方の違い)』となって、伏し浮きの成否を決めている。
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