伏し浮き(蹴伸び)技術 (7)

〜 まとめ 〜

高橋 大和
2008.02.01

 

【まとめ】

伏し浮きが出来るようになったからといってすぐに急激なタイムアップに繋がるわけではない。

伏し浮きが出来るようになっても、伏し浮きが出来ない時に作ったフォームで泳いでしまっては、伏し浮きの効果はほとんど利用されないからだ。

 

伏し浮きの効果を利用して泳ぐには、伏し浮きの姿勢を軸にしたフォームを、新たに組み立てなくては、大きなタイムアップには繋がらない

 

「伏し浮きが出来る事と、伏し浮きのテクニックを利用できる事は、同じじゃないの?何が違うの?」

と思った人は、

「競泳レベルの選手が、まったくの素人のマネをして、変な泳ぎをしても、本当の素人よりも、ずっと速く泳げる」

事を思い出して欲しい。

 

競泳レベルの選手は、基礎的なテクニックを「身に付け」そして「使いこなしている」ので、素人の泳ぎをマネても、やっぱりその基礎テクニックを微妙に使うので、速く泳げるわけだ。

 

「テクニックを持っている事」と「持っているテクニックを利用できる事」は、次元が違うのである。

 

私個人の経験的な感じでは、伏し浮きが出来るようになれば、フォームを意識的に大きく変更しなくても、100Mで1秒程度はタイムアップに繋がると思われるのだが、1秒程度の短い時間では、「伏し浮き効果以外の影響」が無視できないため、伏し浮きの効果を体感する事はできない。

つまり、「伏し浮きを利用したフォーム」に変更しなければ、体感できるほどの大きなタイムアップには繋がらないという事だ。

 

しかし、フォームの変更は非常に難しい問題である事は、選手なら直感的に理解できるであろう。

例えば、世界記録保持者の泳ぎを見て、フォームをどんなによく理解したとしても、自分の泳ぎとして取り込むまでには、長い試行錯誤が必要であり、タイムアップ効果が出てくるまでには時間がかかるのと同じだ。

 

時には逆に、自分の泳ぎを見失ってタイムを落とし、スランプを経験する事もある。

 

だからといって、諦めてはいけない。

 

仮に、「伏し浮きのテクニックを利用するフォーム」を当面は諦めるとしても、「伏し浮き自体のテクニック」を手に入れる事さえも諦めてしまうのは早すぎる。

「フォームの大幅変更」を決意する前に、「伏し浮きのテクニック」を手に入れるだけなら、何の不都合もない。

 

伏し浮きが出来るようになってから、フォームに取り込むべきか、取り込む必要はないかの判断をしても遅くはない。

 

過去の「それで良かった事」を捨て、リスクを背負って新たな事に挑戦していかなければ、今後の成長はない。

 

成長の過程では、守る"場面"もあるが、攻め続ける"姿勢"は常に必要だ。

これからの成長のために、伏し浮きが出来ない選手は、そのテクニックを絶対に身につける必要がある。

 

テクニックを身に着けたら、利用する泳ぎに変えていく必要がある。

 

伏し浮き姿勢を利用して泳ぐテクニックは、重心移動ベクトル化運動理論で解説する。