スプーン泳法 (10) 〜 自由形の泳ぎ方 〜 高橋 大和 |
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■ 泳ぎに使う筋肉とイメージ 伏し浮き姿勢を維持したまま手足を動かしトップスピードで泳ぐには、『静止した伏し浮き姿勢』とは微妙に異なる感覚が必要になる。
『背中側に意識』を向けると『左右それぞれの後背筋(背骨には力が入っていない)』、 『おなか側に意識』を向けると『ミゾオチから下腹部』に向けて力が入る。
この図は、泳いでいる時の力加減を正確に描いていて、後背筋と腹筋(ミゾオチを押し込んだ力)を『お椀状』にして背骨を挟んで、背骨が体内で上下バランス良く浮いている感覚だ。
※注※ 骨盤を押し上げようとして、腹筋にだけ力を入れても、腰周り全体に力が入ってしまう。 『力の三重構造』ですでに説明した『力の連鎖バランス』から生み出す必要がある。
『背中側』に意識を向けて、そこから腰の位置を感じると、『後背筋で背骨を押し下げているせい』で、背中の位置より腰が下がっているように感じるし、 『腹筋側』に意識を向けて、そこから腰の位置を感じると、『腹筋で骨盤を押し上げているせい』で、腰が高い位置に浮き上がったまま、キープされているように感じる。
『背中側とお腹側のどちらに意識を置いて腰の位置を感じ取るか?』によって、腰の高低を逆に感じるが、 『観客側の視点』で泳ぎを外側から見ると、後方に骨盤が押し上げられているせいで、腰の位置は手足の上下動に影響される事なく、非常に高い位置でキープされたまま、ミゾオチで水面を滑るようにして泳げる。
上図で細長く描いている所は、実際に『筋肉の感覚』が、そのように感じているし、 背中側には2つの筋肉が、骨盤から『コブシ縦1つくらい上』までの所で感じるし、 肩甲骨を開いて手を伸ばす事で、後背筋の力が上腕に波及しているし(肘から先はリラックス状態)、 おなか側には、下腹部(骨盤の中)を逆三角形の腹筋で押し上げるような1つの筋肉を感じるし、 横腹に力は入っていなくて、腰の筋肉はリラックス状態にあるし、 泳いでいる最中、下半身は水流(泳速)によってスワ〜〜っと浮いてしまい、 下半身はリラックした状態で、強いキックを入れられる。
これが、第6章で指摘した、『ミゾオチに下半身がぶら下がって泳いでいる感覚』に繋がる。
この『下半身がぶら下がって浮いている感じ』は、 『ミゾオチでバケツを引っ張っているイメージ』で、『コイのぼりの中に空気が流れ込んで浮くイメージ』に近く、 『ミゾオチに結んだコイのぼりの口(骨盤の周囲。パンツのゴムの周囲)に、上下左右’均等’に水が流れ込み、両足の間から流れ出ていくイメージ』 を、私個人的には持っている。 (もちろん、平泳ぎも、自由形も同じイメージ)
バケツの口(骨盤内)に水が流れ込んで、出て行くイメージ
■ 抵抗抑止効果 この力の入れ方が泳ぎにとって、非常に効果的である所は、 腰に力が入っていないのに、上半身と下半身を繋ぐ事が出来る力の入れ方である所だ。
『腰(背中側でパンツのゴムの上、コブシ縦1つ分)』の筋肉がリラックスしているおかげで、 上半身の揺れは、後背筋と背骨の間で吸収、 下半身の揺れは、腹筋と背骨の間で吸収され、 このフレキシブルな腰のおかげで、結果的に、重心(腰)が安定する。
『水流の乱れが小さい』、すなわち、『抵抗が少ない』
※ 注 ※
一方、旧式のモーターボート泳法では、『反り上げて、反り伸びた腰』に力が入っているために『腰が棒状』になってしまい、『背骨の付け根』に上下動が伝わってしまって、骨盤を大きく揺らしてしまう。 腰を高く保とうとして、腹筋や背筋に力を入れれば入れるほど、腰(=骨盤)に『動作支点』が出来てしまって上下動が大きくなり、結果的に腰が沈む。
『上下動による水流の乱れが大きい』、すなわち、『抵抗が多い』
■ 推進力効果 新式のスプーン泳法では、重心(骨盤)と浮心(ミゾオチ)が水平に保たれているため、 キックで押し出した力は、『重心(骨盤)』を素通りして『浮心(ミゾオチ)』にぶつかる。
ミゾオチにぶつかった力で上半身が前に押し出され、キックの力が効率良く推進力へ変換されて、ミゾオチで水面を滑る泳ぎが実現する。
これが、旧式のモーターボート泳法の場合では、 腰が反り上がっているため、キックの力が『腰(重心)』にぶつかってしまい、『反って屈曲している腰』のせいで、キックから伝わってきた力が体の上下動エネルギーとして浪費されてしまう。
上下動は抵抗も大きくなるが、『上下して移動する分、前方への移動距離が短くなる』というデメリットも大きい。 例えば単純に、『上下に1%揺れた(1M進む間に1cm揺れた)』とすれば、『100Mのレースで、101M泳ぐ』事になる。
■ トップスピード効果 上半身と下半身が前後に クロス スライド
トップスピードを出すと、泳速によって体全体が押し上げられ、軽い下半身(腰)は、水流の影響もあって後方斜め上に向かって押し上げられる。
この動きに沿って、下半身を後方に押し伸ばすと、結果的に(反作用的に)、肩甲骨ごと(後背筋ごと)上半身も前方にスライドするため、ストローク長が伸びる。 (『肩を前に出す』のではなく、『肩甲骨ごとスライド』させる事で、結果的に、腕が前に押し出される)
『貝が擦り潰れる』ようにして『体が薄くなるイメージ』だ。
クロススライド イメージ
旧式のモーターボート泳法では、腰周りがロックされて棒状になっているせいで、ストローク動作で上下動が発生していたが、 新式のスプーン泳法では、フレキシブルな腰のおかげで、『後背筋』と『腹筋』が、『背骨』を挟んでスライドする動きに変換されるため、上下動がほとんど発生しない。
このスライド動作のメリットは、単にストローク長を伸ばすだけではない。
ミゾオチ周辺の胴体が薄く水平に伸びる事で、キック動作が『胸の厚み内』に収まるようになり、胸の下を通過した水流が、そのまままっすぐ後方へ流れる。 この仕組みによって、『ミゾオチで水面を滑る泳ぎ』が実現される。
一方、旧式のモーターボート泳法では、腰を反り上げ、棒状にロックされた腰のせいで、キックが胸よりも深い位置で行われてしまい、水流が乱れてキックの効率が悪くなる。 つまり、『水流を乱してロスしたエネルギー』は、『水の抵抗』と『上下運動』に浪費されてしまう。
これらの差は、スプーンをイメージした姿勢が体内(体幹)で作れているかどうかの差だ。 (『筋力の問題』ではなく、『体の使い方』だ。『筋トレをしたから出来る』のではなく、『筋肉の動かし方を訓練する事で出来る』のだ))
スプーンイメージ泳法
これは、私の頭の中でコネクリ回した屁理屈ではない。 これは、私自身が泳ぎの中で実際に感じている感覚を、詳細に感じ取って文字にしたもので、選手による、選手のための、実体験の体感分析理論だ。
金メダリストのマイケル・フェルプス選手も、平泳ぎの北島康介選手でさえ、ほら。
2008年北京五輪 200M自由形準決勝
2008年北京五輪 北島康介選手
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