腰痛 (5)

〜 寝具 〜

2008.11.20

  

 

「腰痛持ちは敷布団は薄い方が良い」という伝説は嘘だ。

医学的根拠はまったくなく、薄い敷布団は逆に腰が痛くなる。椎間板ヘルニアを経験した私の腰にある腰痛センサーが自信を持って断言できる。

「暗い所で本を読むと視力が落ちる」

という事に医学的根拠がまったくなく嘘話だという話と同様に、「腰痛には、薄い敷布団が良い」という話が嘘である事が、最近はテレビなどでもたまに指摘されるので知っている人もいるだろう。

薄い敷布団に寝ると、自分の体の重みでお尻と腰が圧迫されて血流が悪くなり、腰が重く(痛く)なる。

実際、私も薄い敷布団で寝ると、朝起きたときに、腰が重くなる。

椎間板ヘルニアでひどい腰痛をかかえると、今まで以上に腰が非常に敏感になる。私は「腰痛センサー」と自分で呼んでいるが、腰痛持ちは良い布団と悪い布団を見分ける高感度センサーが腰に備わるので、腰に良いものと悪いものを敏感にかぎ分けられるようになる。

良い方は「半年使ってみると、確かに腰が痛くないなぁ」といった感じなので、判別するのに時間がかかるが、悪い方は1日で判断できるようになる。

薄い敷布団に寝ると次の日の朝には、腰が重くなり、「あーやばい」という腰痛持ちなら分かる、あのいやーな独特の腰の重さが出る。

「敷布団が薄い方が寝返りがうちやすいから良い」などともっともらしい事をいう奴もたまにテレビで見かけるが、俺は言いたい。

「お前は、腰痛持ちじゃないだろ。腰痛持ちじゃないから、薄い布団に寝ても、そうじゃない布団に寝ても腰が重くならないだろ。お前は腰痛の苦しさを知らないから、頭の中だけで考えた理屈だけで、平気で嘘を言っていられるんだ。腰痛の苦しみは、生命の不安を感じるほど辛いんだぞ、安易な事を安易に言わないでくれ」

良い布団は寝返り自体をうたなくなる。寝返りは、自分の体の重さで背中側が圧迫されて血流が悪くなったのを開放するために行う行為だから、血流が悪くなければ寝返りなんてそれほど打たない。

逆に、「やわらか過ぎる布団も腰には、すごく悪い」のは本当だ。

これは、私の腰の腰痛センサーも悪いと言っているが、ちゃんとした理由もある。

 

図 5-1

 

やわらか過ぎる布団に寝ると、重いお尻が沈み込む。それだけでも、腰が反ってしまい当然腰に悪い。

しかし、悪いのはそれだけではない。一枚の生地や綿で出来ている布団だと、沈み込んだ生地に周辺の生地までもが一緒に引っ張り込まれてしまう。その「周辺の生地」の上には背中が乗っている。沈み込んだお尻の下の生地に、腰の下の生地も引き込まれて、"より"腰が反ってしまう

これは腰にとって最悪だ。安いブヨブヨのベットで寝ると、腰が痛くてたまらない。確かにこんなブヨブヨのベットに寝るくらいなら、薄い敷布団や床に寝る方が、まだマシだ。

この「引きずり込み効果」がやわらか過ぎる布団の一番悪い所だ。

かといって、お尻がまったく沈み込まないという物では、自分の体の重さで背中が圧迫されて血流が悪くなり、朝、腰が重くて危険な状態になる。

極端に言えば、床に直接寝ればお尻も背中もまったく沈み込まないが、床に直接寝た後の腰の重さは腰痛持ちなら良く分かるだろうし、腰痛持ちでなくても負担がかかるのは分かるだろう。

「やわらかさの面」と「硬さの面」の両面を総合してベストな敷布団あるいはマットレスというのは、

血流を妨げないやわらかさと、お尻が沈み込みすぎない硬さのバランスがベストに取れていて、沈み込むお尻に腰が引っ張り込まれない物がベストな敷布団(マットレス)

という事になる。

一番良いと私が考えるのは、ベットのマットレスならコイルスプリングのように、体を点で支えてお尻の沈み込みによって腰までもが引きずり込まれない構造のものが良いと考える。

ただし、私は医者ではないのでその部分は差し引いて捉えて欲しい。私は自分の経験を書いているだけなので注意して欲しい。全面的に他人の言う事を信じるのではなく、自分の頭で考え、自分で判断して欲しい。

腰痛患者なら敷布団をさんざんネットで調べているだろうが、

「直立した姿勢で横に寝る事で体圧を分散させて・・・・」

という事をよく解説している。私もこれは正しいと思う。間違いはないと思う。

が、前章でも指摘したように、腰痛患者は元々まっすぐ直立が出来ないのだから、「まっすぐ」というのがどんな感覚なのか知らない。だから、実際に展示品の布団に寝てみても、それが良いのか悪いのか分からない。

本当はまっすぐの良い姿勢で寝れているのに、「いつもと違う」といつもの悪い姿勢の方が良いように感じてしまって、良い敷布団を選べないという事が起きうる。

立ち姿勢が良くなり、結果、腰痛が改善した頃くらいにならないと、「まっすぐに寝る」という事は体感できない。

腰痛患者は「本当はまっすぐじゃない感覚を、まっすぐだと捉えて感じてる」のだから、「直立した姿勢で横に寝る」と言われても良く分かるはずもない。

だから、寝具を選ぶ時には、

「体を点で支える仕組みになっているか?」

「やわらかすぎず、硬すぎずであるか?」

を基準に選ぶのが良いと思う。

ちなみに私は西川の整圧布団を使っている。

 

整圧布団 三折り式

 

良いか悪いかと言われれば、明らかに良い。

適度な硬さであり、点で支える構造のため引きずり込まれない。薄いマットレスにはよくある「底付き感」もない。

私はこの布団にしてからは、寝返りをあまり打たなくなった。寝返りを打たないのに腰は痛くならない。

詳しい「なにがどう良いか?」は製造元の西川産業のHPを参考にしてください。

良い所は売り手がいくらでも説明しているから、デメリットを書いた方が役に立つだろうと思うので、私が感じるデメリットを挙げる。

例えば、夜中に目が覚めてトイレに行ったりする時に、布団の上で立ち上がると、点で支えたやわらかさのためだと思うのだが、すこしふらつく。

腰痛持ちには不意の転倒やつまずきは、腰が非常に危ないので、フラフラするというのは少し怖い。

ただ、出来るだけ布団の上で立ち上がらないようにしたり、寝ボケたまま、立ち上がらないようにすれば、「デメリットだ!」というほどのデメリットではない。

もうひとつは、新品で買って1週間くらいは、少しウレタン臭がする。新車を買った時ほどではないが、化学物質の臭がする。化学物質過敏症の人はやめておいたほうが良いと思われる。

私は有機化学を専門に学んだという事もあり、化学に対して普通の人より神経質な面があるので、買って1週間くらいは使わず陰干ししてから使い始めた。どんなに悪く見積もっても1ケ月もすれば、臭いはしなくなったので、普通の人なら特に問題はないと思う。現在3年ほど使って、体に悪い影響はまったく出ていないし、もちろん、もうまったく匂いは感じない。

私の部屋は狭いので、毎日たたんで立てかけるためにパーツが3つに分かれていて3つ折に出来るタイプを買ったが、1枚続きで丸めてたたむタイプならもう少し安く買える。

 

整圧布団 1枚続き式

 

この2つのタイプは折りたたみ方の違いだけでなく、硬さも少し違うようで、上の3つ折り式の方が少し硬めなので体重の重い男性などは、上の方が良いらしい。私は体重65キロで3つ折り式を使っているが、本当はどっちが良いかはよく分からない。

整圧布団の残念なのは、ネットで探しても定価販売ばかりだという事だ。値引きしている所が見つからない。

整圧布団は、ムアツ布団の進化版なのだが、ムアツ布団なら定価もだいぶ安く、また値引き販売もされているので安く買える。

 

 

ムアツ布団 三折り式

 

ムアツ布団 1枚続き式

 

ムアツ布団も整圧布団と発想は同じだが、支える点の数が整圧布団の方が細かく圧倒的に多い。

「支える点は多い方が良いのか?」というのは開発者ではない私にはよく分からないが、支える点が多い方が、お尻の沈み込みに腰が引きずり込まれる影響も少ないのではないかと思う。

私は単身者であるため、引越しの邪魔になるものは買いたくないし、部屋も狭いのでベットは対象外なのだが、「ベットだから腰が痛くなる」なんて事はない

私はホテルに泊まる時には、そこそこのレベルのホテルを選ぶようにしている。理由は、「安いホテルはベットにブヨブヨにやわらかいマットレスを使っていて、腰が痛くなる」からだ。

そこそこのホテルは、少なくともそこそこ良いレベルのマットレスを使っており、寝心地の良いベットは腰は痛くならない。

もしベットを買うのなら、コイルスプリング式のマットレスが良いのではないかと考える。

 

シモンズ コイルスプリングマットレス

 

理由は整圧布団と同じで、体を点で支えるので、お尻の沈み込みに腰を引っ張られなくて良いのではないかと思う。

マットレスはいろんなメーカーからたくさん出ているので、私は「これが良い」とはとても言えない。ただ、布団にしても、ベットのマットレスにしても、いろいろ調べて、実際に寝てみたりした結果、どっちを買うか迷った時に私が選ぶ時に考慮する点は2点。

1. シェアNo.1を買う
2. 値段の高い方を買う

理由は簡単だ。「シェアNo.1には理由がある」。当然、良い理由でシェアNo.1になっているはずだ。

同様に、「値段が高いのは理由がある」。当然、良い理由で値段が高い。

とくに、コイルスプリング式のマットレスは異常に安い物も売っているが、私は信用できない。安物は機能もヘッポコの可能性が非常に高い。

例えば、私は「低反発枕」を持っているが、安いものを買ってしまって、冬はカチンカチンに硬くなり、夏はブヨブヨにやわらかくなる。

高いテンピュールなどは、そんな事は起きないのに、安物は温度変化で枕の性質まで変わってしまった。こんなものはお金をドブに捨てたも同然だ。

空調の効いたお店では、問題ないように思えても、24時間フル空調の部屋ではない自分の部屋では、まったく使い物にならない。高い製品を買っていればそんな事もなかったはずなのだ。

もちろん高いものには、ブランド力やブランド料という部分も当然あるが、ブランド力にしろブランド料にしろ、それを維持するには、紳士的姿勢がなければ維持できない。

洋服のようなどうでも良いブランドの差は小さいが、「道具」の場合は「機能が優れている」という部分が秀でていなければブランドを維持できない。道具は機能が大切だ

私も「整圧布団は高いなぁ」とは思った。が、椎間板ヘルニアで半年も寝込んだあの辛さを避けられるのなら、給料の1ケ月分くらいまでなら、かまわないと思った。

実際、整圧布団を買う前に、1万円くらいの安い低反発布団を買ったのだが、まったく使い物にならなかった。

夏はやわらかすぎるし、冬は硬くなって、腰も痛くて、結局1年ほど使って腰が痛くて捨てた。

安物買いのなんとやらである。「高くても最初から良い方を買えば良かった。結局、2重に損した」とすごく後悔した。

だから、コイルスプリング式のマットレスを買う時には、値段の安さではなく信頼できるメーカーで選んだほうが良い。どこのメーカーが良いかよく分からないが、歴史があるメーカーは信頼されて買われ続けているから潰れないという面があるので、"その世界"の一流メーカーは信用できると考えられる。

同じものなら安い方が良いが、種類を選ぶ時には、値段の安さではなく、性能の信頼性で選ばなくては意味がない。それがどこのメーカーで、どの製品なのかは私は知らないので、自分で調べて見つけてくれ。

また先に述べたように低反発マットレスを買うのなら、安物は絶対に避けたほうが良い。気温でマットレスの硬さが変わってしまうなんて話にならない。

値段の高さや知名度からするとテンピュールなどは良いとは思うが、私がテンピュールマットレスを使って寝た経験がないので良く分からない。

 

テンピュールマットレス

 

良いかどうかわからないのだが、もし低反発式マットレスを選ぶのならひとつ注意した方が良い点がある。

低反発枕がそうなのだが、心地よく沈み込むのは、「肌心地」も良く、「気持ち」も良くていいのだが、「夏暑い」。

低反発枕では、頭を包み込むように沈み込むので、冬はあったかくて、肌心地が良くて、気持ち良いのだが、夏は頭の周りを覆われているのが暑くてとても寝れたもんじゃない。汗ぐっしょりだ。

お金持ちで、「夏はエアコンをガンガン効かせて布団を被って寝るからいいんだ」という人は問題ないと思うが、そうでない人は、夏場の暑さを考慮した方が良い。

テンピュールマットレスが夏場どうなのかは私は知らないので、自分で買うときに考慮する情報のひとつ程度に受け取って読んでもらいたい。

ちなみに整圧布団は、通気性が良く、「夏に暑くて」という事はなかった。むしろ、普通の綿布団より涼しい。

もうひとつ、テンピュールマットレスは一枚続きで出来てると思うのだが、「お尻の沈み込みに腰が引きずり込まれる部分の考慮はされているのだろうか?」という部分が気になる。考慮されているのかもしれないし、考慮されていないかもしれない。私は分からない。

また、整圧布団にしろ、コイルスプリング式マットレスにしろ、テンピュールマットレスにしろ、その上にシーツを引いて直に寝なくては意味がない

厚みのある敷き布団を上に引いてしまうと、敷き布団の性能になってしまって、せっかく高いものを買ってもその性能がまったく機能しなくなってしまう。

「汗でもったいないなぁ」

と思っても、シーツだけを引いて寝るようにしなくては意味がない。

最後に注意して欲しいのは、「布団を変えれば腰痛が治る」という事はない。

「良い敷布団、良いマットレスに寝た次の日から腰がどんどん良くなる」事もない。もちろん私の使っている整圧布団に寝ても、その効果を体感は出来ない。なぜなら、

「半年、1年たってから、前の布団では痛かったけど、この布団は痛くならないなぁ。前のとはずいぶん違うなぁ」

とか、旅行などでいつもと違う布団に寝て起きた時に、

「うー腰が重い。やっぱり自分の家で使っていた布団は効果があるんだなぁ」

と、そういう効果の感じ方をするだけだからだ。

朝起きた時に、「この敷布団さいこー!」なんて感動はありえない。少なくとも私はそんな事は感じた事はない。

腰痛を改善するのは、寝具を変えるという「守りの戦略」ではない。

すでに述べたように、私の腰痛を改善させたのは、開脚訓練によって股関節の柔軟性を手に入れた事が最大ポイントで、本当の意味での「まっすぐの姿勢」を作る「攻めの戦略」を続けている事だ

寝具は、昼間の活動で良くなった腰を寝てる間に悪化させないために選ぶのだ。

ヘボい寝具で寝れば、腰痛は確実に悪化する。「良い寝具で寝れば、腰痛が悪化しない」だけだ。勘違いしてはいけない。

問題に取り組む時にはすべて同じだが、「腰痛に対して、正面から向き合い、積極的に自ら取り組む」事が重要だ。

「お金を出したら治るんじゃないか」「楽して治る方法があるんじゃないか」という姿勢は、問題に取り組む姿勢ではない。

もちろん、一生の1/3は布団の上で寝ているのだから、「寝具が正しい姿勢に矯正してくれる面」が多少あることは否定しない。

しかし、「寝具による矯正に頼ろう」とする甘い姿勢では、腰痛という難敵には勝てない。敵には、目を向けたくない部分にまで目を向け、自らの体で正面から取り組むしかない。

「医者が」「寝具が」という逃げは甘い。医者や寝具は補助だ。自分の体には自分で責任を持つしかない。

「私が3年使ってみて、整圧布団は良い」「今は腰痛が激減した」と言った言葉を都合よく繋げて、「整圧布団で腰痛が治る」なんて都合の良い解釈をしてはいけない。

私の腰痛が激減した理由は、間違いなく、「開脚を続けて股関節の柔軟性を手に入れ、まっすぐの姿勢を正した」事だ。

整圧布団は、その良くなった腰を逆戻りさせて悪化させるような事はないというだけだ。

(ほんとうは、少し布団に助けられている面もあると思っているが、そんな事を言うと、そこに甘えて開脚訓練をやらなくなるから差し引いて考えるようにしている)

私は医者でもなければ、布団の専門家でもない。椎間板ヘルニアの激痛で苦しんだ経験から書いているだけなので、その点を考慮し、差し引いて読んで欲しい。

腰痛患者なら誰でも「良い寝具が欲しい」と思うが、高いものをいくつも次々試すわけにいかないから、私の使った物の情報を載せているだけだ。「もっと良いものがある」という情報は逆に私に教えて欲しい(押し売りは、いらないです(^.^)私は理屈っぽい人間なので、理屈の通らない事を押し付けても無駄です)。

あくまで「経験者の情報のひとつ」である事を忘れないで欲しい。自分で考え、自分で布団屋に足を運んで寝比べたりして、良いものを見つけて欲しい。