重心移動ベクトル化 競泳理論 (3)

〜 道具である手足の使い方 〜

2010.08.01

  

 

■ 重心をまっすぐ押せ!引っ張れ!

『重心を移動させるのが競泳の本質部分』

である事が分かれば、次に考える事も、単純明快だ。

 

『重心を引っ張る力』『重心を押す力』を、

『重心に対してまっすぐ』かけるのが、

もっとも合理的な力のかけ方であるのは、疑いの余地がない。

 

 

図から省いた部分も表示すると、

 

 

手(上半身)は、重心を引っ張る道具。

足(下半身)は、重心を押す道具。

 

『速く泳ぐには、体をどう使うのか?』

という部分に、極めて単純明快な答えが見て取れる。

 

クロール、背泳ぎ、平泳ぎ、バタフライ。どの泳法でも、関係ない。

 

この4泳法の違いは、クロールでいう所の

『S字ストロークと、I字ストロークの違い』

のように、単なるフォームの違いで、

『重心をまっすぐ移動させるのに最も合理的なフォームが、クロール。次がバタフライで、その次が背泳ぎで、一番合理的じゃないフォームが平泳ぎ』

というだけの事だ。

 

もう少し具体的に言えば、上半身を上下動させる平泳ぎ、バタフライでも、骨盤(重心)まで上下動させるようなフォームを使っている選手は、遅い。

重心を水面下に沈めたまま、大きく上下動させている人が、『助けてくれ〜〜』と溺れて、呑気にワラを掴んだりしている。

(両極端の状態を見て切り分けると、原因を探り当てやすい。『競泳選手』と、『溺れている人』の『腰』の動きを見比べると、速さの本質を捉えやすい)

 

『体を上下動させて、その位置エネルギーを利用する』なんて理論が、

あまりにも的外れな戦略で、ベクトル的に考えていれば、そんな愚策は試さなくても分かったはずだ。

 

※※ 備考 ※※
上図を見れば分かるように、S字ストロークで重心を左右にブラすよりも、I字ストロークでまっすぐ引っ張る方が、重心を合理的に引っ張りやすい。

 

腰より下に『フィニッシュ!』して強く押し出していた昔のS字ストロークよりも、

肩甲骨ごと腕を前方に入水し、より前方からストロークを開始して、腰の所で終わらせる現代のI字ストロークの方が、

合理的に重心を引っ張れるのは、明白だ。

 

『I字ストロークを使っているけど重心がブレる選手(例えば、現代の遅い選手)』

よりも、

『S字ストロークながら重心のブレが最小である選手(昔の世界記録保持者。例えばゲインズさん)』

の方が速いからといって、旧式のS字ストロークに正当性はない。

 

ただ、時代は回るので、S字ストロークに何らかの改良を加えれば、現代のI字ストロークを上回る合理的なストロークが生み出される可能性は十分にある。

少なくとも、『技術は常に、時代とともに進化する』ので、現在使われているI字ストロークもいずれ廃れるのは、間違いない。

 

それでも、

『速く泳ぐ方法は、重心をまっすぐ移動させる事』

という根本は、いつの時代でも変わらない。

 

根本部分の上に乗っている理論である

『よりまっすぐ、より合理的に動かす新しいフォーム』が、

時代とともに変化するだけだ。
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