自由形 (8) 〜 ストローク感覚 〜
2011.07.30 |
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■ ストローク感覚の違い 『S字ストロークのハイエルボー』は、肘を残したまま、肘から先を折り曲げて来る感覚があるが、 I字ストロークの場合は、肘を残さずにそのまま引き抜く感覚で、『意識的に肘を立てる動作感覚』はない。
S字ストロークは、手を横に開きながら肘から先を意識的に折り曲げるハイエルボーテクニックのせいで、首をすくめるようにして肩をロックしたまま肘が水中深く沈み込んでストロークしていく事になり、上体が前ノメリに水中へ沈み込んでしまう。
一方、I字ストロークの場合は、『プルで肘を後方に引き抜いていく動作』と『リカバリーの肘を前方に押し開く動作』によって『胴体のスライド移動』が起きて、肘が水面の高い位置に保たれたままのストロークが可能になる。 (S字ストロークは『肘から先で水をしっかり捉える感覚』だったが、I字ストロークは、プールから上がる時のように、肘を抜きながら『手の平で水を軽く捉える感覚』)
現役選手の肘を映像で見ると、外見的にはI字ストロークの方が深く曲がって見えるが、泳いでいる本人に肘から先を曲げ込んで来る感覚はほとんどなく、体もフラットに移動していく。 (プールから上がる時の感覚を自分でよく分析してみると良い。肘を抜きながら手を引いても、肘が体の近くを通りつつ胴体が上昇していくため、肘が逃げる事もないし、水をなでるような事にはならない)
別の視点で切ると、S字ストロークでは、『S字ローリング ハイエルボー動作』によって、手が胴体から遠く離れてしまい、ストロークが回転動作気味になって、その分だけ大きな力を入れてストロークする事になるが、 I字ストロークでは、手(や肘)が胴体の近くをまっすぐ通っていくため、小さな力で軽いストロークが可能になる。 (重い物を持ち上げる時をイメージすると良い。体の近くでまっすぐ持ち上げる方が小さな力で持ち上がる事を感覚的に知っているから、手を伸ばして物を持ち上げる人はいない)
つまり、高い位置に肘が保たれたままのI字ストロークは、S字ストロークの『腕を内転させるハイエルボー技術』とはまったく違う。 I字ストロークの腕は、むしろ外転気味で、(マイケル・フェルプス選手のキャッチを参照) ハイエルボーテクニックを使っていないのに、結果的に、S字ストロークよりも高い位置に肘を保ったままストロークする事が出来る。(世の中は逆説的で、おもしろい)
『お前は自由形が遅いクセに、平泳ぎの動きがクロールに通用するなんて、うそくせ! 肘を抜けとか、後ろにバックした方が前に進むとか、うそくせ!』 という捉え方は、物事の表面でしか世界を眺める事が出来ない子供が使う視点だが、他人の言う事を安易に信じないという姿勢は正しい。
今一度、トップ選手のストロークを自分で分析するのが、選手として大切な姿勢であり、資質だ。
(2000年シドニー五輪の映像ではまだ、S字でクネクネ泳ぐ選手がいる所が比較参考になる)
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