平泳ぎ (7) 〜 キック 〜
2008.10.31 |
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平泳ぎのキックは、 足を引き付けないし! 斜め下に蹴り込まないし! 膝から先を回さないし! 挟まない!
『膝から先を回転(外転)させて、挟み込む。挟み込む勢いで加速する』 そんなキックの時代は、もう、とっくの昔に終わった。 ※ 注 ※ そもそも、1980年代にはウェッジキックなんて言ってなかった。 すでに廃れてしまったキックに対し、わざわざ、『イメージの湧かない言葉』を使うのは好きじゃないから、ウェッジキックの事は、『回転挟み込み式キック』といったような我流語で表現します。
この古い方式のキックは、2004年頃から選手レベルで消え始めて、2008年頃からは耳にする事もほとんどなくなった。
平泳ぎのキックは、押せ! まっすぐ後ろに、押すのだ!
2003年8月 スポーツ番組 NANDA
これは2003年8月にテレビ朝日の深夜スポーツ番組『NANDA!?』で、北島康介選手がキックの蹴り方を話した時の映像だ。
こう言っている私自身、この番組を見た時は、 『えー! 平泳ぎのキックって回さないの! 挟まないの!』 と、深夜にテレビの前でひっくり返ってしまったほど、驚いた。
その後、私自身も新型のキックを使えるようになって分かった事だが、 平泳ぎのキックは、ミゾオチを支点にして呼吸した後、 後方にバックしながら戻って、 戻る事で膝の屈曲が作られ、 お尻がバックしてきた勢いのまま、かかとを後ろにまっすぐ押す。 (『つま先ではなく、かかとで押す』所以外は、陸上でジャンプする動作と同じ原理。スプーン泳法の11章参照)
新しい平泳ぎは、水の浅い所を、薄く、フラットに、泳ぐ方式へ改良されている。 (ウェーブ泳法のように、水上で泳ぐのではなく、逆に水面下の浅い所で薄く泳ぎ続ける感じ)
この違いは、単に『下半身の沈み具合による水流抵抗の差』だけでなく、 旧式の泳ぎのベクトルが、『斜め上』に向いていたのに対し、 新しい泳ぎでは、真後ろに押す事で、推進ベクトルが、ほぼまっすぐ前に向いている部分の差もかなり大きい。
『うそだ!平泳ぎのキックは、斜め下に蹴って、回して挟むんだ!』 と、20世紀に選手経験のある人たちが信じられないほど、当時、回転挟み込み式キックは絶対的な常識で、 そんな時代が長く続いた事もあって、2011年の今ですら、まだ、なお、 『平泳ぎは、足を回す』 と、すでに廃れた指導が、根強くされていたりする。
しかし、2003年の段階ですでに、北島康介選手の持っているイメージは、まっすぐ押すだけだ。
見よ!北島康介選手のカカトの狭さを!
かかとで、バレーボールを押すかのように、まっすぐ押しているだけだ。 北島康介選手が持っているイメージに、回転させたり、挟む動きは、まったくない。
『だって!だって!ほら、水中で見ると、回ってるじゃん!』 と、否定したくなるのは分かる。
確かに、『蹴るっていうより、押す感覚ですね』と2003年に言った北島康介選手本人ですら、2003年の世界選手権で、膝幅よりも若干外側に蹴り出されているが、 これは、実際の水中では大きな水中抵抗があるために、足裏に水が引っかかって押されるせいで、空中の空気抵抗と違って、まっすぐは蹴れないからだ。
2003年世界水泳 100M決勝
世界トップの感覚を持っている北島康介選手の感覚ですら、『まっすぐ押している』つもりで蹴っても、見かけ上は、多少回ってしまうわけだから、凡人が回そうと思ったら、どうなるかは言うまでもない。 『素人がまっすぐ蹴ろうとしても、膝が開いて大きく回ってしまう』のだから、頭の中のイメージくらいは、まっすぐ蹴る(押す)映像をイメージできなくてはならない。
※ 備 ※
上の最後の写真を見ると、北島康介選手の『肩幅キック』とは違い、隣の選手(手前の選手)が、 『リカちゃん人形が、肩幅より広くオッピロゲた足のようなスッポ抜けキック』 をしている事から分かるように、2003年当時はまだ、『回転挟み込み式のキック』を使っている選手がいた事が分かる。
1980年代にも使われていた『回転挟み込み式キック』と見比べても、足のスッポ抜け具合が、そっくりだ。 1980年代前半に活躍した長崎宏子さん
旧式の回転挟み込み式キックは、膝に大きな負担がかかり、怪我のリスクが非常に高かった。 『ウィップキック』と呼ばれる『まっすぐ押すキック』は、陸上動作で言う『単なる屈伸動作(ジャンプ動作)』なので、膝への負担が少ない。 お年寄りこそ、新型の『押すキック』へ変えた方が良い。
ちなみに、ウィップキックはWhip kickの事のようで、辞書を引くと『ムチ打つ キック』という意味だ。 確かに、ウィップキックを真横から見た時の『見た目』は、『ムチ打つような感じ』に見えるから、解説用語としてはいいと思う。 ただ、動作感覚からすると、Whipで悪くはないんだけど、ん〜〜微妙・・・・ちょっと違う・・・動作感覚的には、バックしながら、プッシュする、キックかな。
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