平泳ぎ (7)

〜 キック 〜

2008.10.31
修正 : 2011.03.20

  

 

平泳ぎのキックは、

足を引き付けないし!

斜め下に蹴り込まないし!

膝から先を回さないし!

挟まない!

 

『膝から先を回転(外転)させて、挟み込む。挟み込む勢いで加速する』

そんなキックの時代は、もう、とっくの昔に終わった。

※ 注 ※
ウェッジ キックとも呼ばれるが、日本人に英語で言われても、ぜんぜんイメージが湧かない。

そもそも、1980年代にはウェッジキックなんて言ってなかった。

すでに廃れてしまったキックに対し、わざわざ、『イメージの湧かない言葉』を使うのは好きじゃないから、ウェッジキックの事は、『回転挟み込み式キック』といったような我流語で表現します。
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この古い方式のキックは、2004年頃から選手レベルで消え始めて、2008年頃からは耳にする事もほとんどなくなった。

 

平泳ぎのキックは、押せ! まっすぐ後ろに、押すのだ!

 

2003年8月 スポーツ番組 NANDA

 

これは2003年8月にテレビ朝日の深夜スポーツ番組『NANDA!?』で、北島康介選手がキックの蹴り方を話した時の映像だ。

 

こう言っている私自身、この番組を見た時は、

『えー! 平泳ぎのキックって回さないの! 挟まないの!』

と、深夜にテレビの前でひっくり返ってしまったほど、驚いた。

 

 

その後、私自身も新型のキックを使えるようになって分かった事だが、

平泳ぎのキックは、ミゾオチを支点にして呼吸した後、

後方にバックしながら戻って、

戻る事で膝の屈曲が作られ、

お尻がバックしてきた勢いのまま、かかとを後ろにまっすぐ押す。

(『つま先ではなく、かかとで押す』所以外は、陸上でジャンプする動作と同じ原理。スプーン泳法の11章参照

 

 

新しい平泳ぎは、水の浅い所を、薄く、フラットに、泳ぐ方式へ改良されている。

(ウェーブ泳法のように、水上で泳ぐのではなく、逆に水面下の浅い所で薄く泳ぎ続ける感じ)

 

この違いは、単に『下半身の沈み具合による水流抵抗の差』だけでなく、

旧式の泳ぎベクトルが、『斜め上』に向いていたのに対し、

新しい泳ぎでは、真後ろに押す事で、推進ベクトルが、ほぼまっすぐ前に向いている部分の差もかなり大きい。

 

 

『うそだ!平泳ぎのキックは、斜め下に蹴って、回して挟むんだ!』

と、20世紀に選手経験のある人たちが信じられないほど、当時、回転挟み込み式キックは絶対的な常識で、

そんな時代が長く続いた事もあって、2011年の今ですら、まだ、なお、

『平泳ぎは、足を回す』

と、すでに廃れた指導が、根強くされていたりする。

 

しかし、2003年の段階ですでに、北島康介選手の持っているイメージは、まっすぐ押すだけだ。

 




見よ!北島康介選手のカカトの狭さを!

 

かかとで、バレーボールを押すかのように、まっすぐ押しているだけだ。

北島康介選手が持っているイメージに、回転させたり、挟む動きは、まったくない。

 

 

『だって!だって!ほら、水中で見ると、回ってるじゃん!』

と、否定したくなるのは分かる。

 

確かに、『蹴るっていうより、押す感覚ですね』と2003年に言った北島康介選手本人ですら、2003年の世界選手権で、膝幅よりも若干外側に蹴り出されているが、

これは、実際の水中では大きな水中抵抗があるために、足裏に水が引っかかって押されるせいで、空中の空気抵抗と違って、まっすぐは蹴れないからだ。

 



2003年世界水泳 100M決勝

 

世界トップの感覚を持っている北島康介選手の感覚ですら、『まっすぐ押している』つもりで蹴っても、見かけ上は、多少回ってしまうわけだから、凡人が回そうと思ったら、どうなるかは言うまでもない。

『素人がまっすぐ蹴ろうとしても、膝が開いて大きく回ってしまう』のだから、頭の中のイメージくらいは、まっすぐ蹴る(押す)映像をイメージできなくてはならない。

 

※ 備 ※
上の映像の100M平泳ぎ59.78は、2003年当時の世界記録。スロードノフ選手に続き史上2人目となる1分切り。日本人による100M平泳ぎ世界記録としては、田口キックの開発者が1972年ミューヘン五輪で樹立して以来、31年ぶりの快挙であった。

 

上の最後の写真を見ると、北島康介選手の『肩幅キック』とは違い、隣の選手(手前の選手)が、

『リカちゃん人形が、肩幅より広くオッピロゲた足のようなスッポ抜けキック

をしている事から分かるように、2003年当時はまだ、『回転挟み込み式のキック』を使っている選手がいた事が分かる。

 

1980年代にも使われていた『回転挟み込み式キック』と見比べても、足のスッポ抜け具合が、そっくりだ。

1980年代前半に活躍した長崎宏子さん

 

旧式の回転挟み込み式キックは、膝に大きな負担がかかり、怪我のリスクが非常に高かった。

『ウィップキック』と呼ばれる『まっすぐ押すキック』は、陸上動作で言う『単なる屈伸動作(ジャンプ動作)』なので、膝への負担が少ない。

お年寄りこそ、新型の『押すキック』へ変えた方が良い。

 

ちなみに、ウィップキックはWhip kickの事のようで、辞書を引くと『ムチ打つ キック』という意味だ。

確かに、ウィップキックを真横から見た時の『見た目』は、『ムチ打つような感じ』に見えるから、解説用語としてはいいと思う。

ただ、動作感覚からすると、Whipで悪くはないんだけど、ん〜〜微妙・・・・ちょっと違う・・・動作感覚的には、バックしながら、プッシュする、キックかな。
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