スプーン泳法 (3) 〜 モーターボート泳法の限界 〜 高橋 大和 |
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■ 旧式 『モーターボートイメージ』のベクトル図 モーターボートイメージ型の泳ぎでは、伏し浮きテクニックを使っていないため、そのままでは重心(体)が沈む。
キックやS字ストローク(スカーリング)、あるいは、『体全体の上下動』といった動作から、 『重心位置を維持するための力』を発生させる必要があった。
そのために、『自分の体から出力できる力のすべて』を推進力に利用する事は出来ず、 『浮力を作り出す力』と『推進力』に分散 する羽目になる。 (力を分散した挙句、後半疲れてくるとキックやプルが弱くなり、腰が沈んで体を高い位置に保てない)
『前方移動の推進力』以外に、『浮力の発生』に力を分散させた事を示す『ベクトル図』が、下の図だ。
【1】 力を分散する無駄 【2】 力が上に逃げる無駄
■ 伏し浮きの出来ない選手は、旧式泳法で戦うしかない このベクトル図を別の切り口から眺めると、モーターボート泳法の別の姿が見えるようになる。 『ベクトル図』に、『モーターボート泳法』を、乗せてみる。
『ベクトル図の上に』 => 『泳ぎを乗せる』 という思考順序が、『新しい視点で捉える』ためには大切だ。
モーターボート泳法のベクトル図
見えただろうか?
『昔の泳ぎは、腰を反ってるから悪い』 ような気がするが、 『その捉え方では、原因と結果が逆』 だ。
『同じ事実でも、どの方向から切って捉えるかによって、現実が逆さまに見える』 のは世の中と同じで、自分の視点が、逆さまに世の中を見ているから、 『腰の反りさえ直せば、良いんだろ』という『間違った解決策』 を模索する羽目になる。
原因と結果を逆に捉えているのだから、そこから出てくる解決策が役に立たないのは当然で、 『入力が間違っている』のに、『答えが違う』と悩み続けても、解決策は生まれない。
『原因と結果』を注意深く捉え直せば、 『伏し浮きが出来ない代わりに、手や足で水を押さえつけて重心を支えている選手は、力が(ベクトルが)斜め上に向いているため、腰を反るしか方法がない。 力が斜め上に向いているのに、無理して上半身だけを水中に突っ込むと、泳ぎがツンノメってバランスが崩れ(あるいは、キックが空中を空蹴りして)、余計に遅くなる。 ツンノメらずに上半身を突っ込むために腰の力を抜くと、今度は重心が沈む上に、プルとキックを繋ぐ力が作り出せず、余計に遅くなる。』 という、 『伏し浮きが出来ない選手は、どう転んでも、現在のフラット泳法を実現できない現実』 が、見て取れる。
つまり、斜め上に力がかかっている都合上、伏し浮きが出来ない人が腰の反りを直す事は出来ない。
『斜め上に向かうベクトル』を生み出している根本原因は、 『伏し浮きが出来ない事を放置した代わりに、手足で水を押して体を支えようとしているから』 であるので、 『伏し浮きが出来るようになり、泳ぎの中に伏し浮きテクニックを取り入れれば、腰の反り(旧泳法)は勝手に直る』 わけだ。
原因さえ正しく捉えられれば、そこから出てくる戦略も的を得たものになり、 『(ストロークの軌跡といった)表面的な動作ばかりを真似る無駄な時間』 を浪費する事なく、より効率的なステップアップ作戦を実行できる。
マスターズ選手で伏し浮きが出来ず、 『泳ぐ事に速さを求めているのではなく、楽しさを求めている』 のなら、現在の選手の泳ぎを真似るのではなく、 『1980年代の選手の泳ぎを真似て、モーターボート泳法を極めた方が、成長戦略として良い』 だろう。
ただ、もし、現役選手で上位を目指しているのなら、泳ぎやタイムを追及する前に、 『伏し浮きが出来なくてもなんとかなる』という甘えた思想 は、さっさと捨てる事だ。
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