もぐれない初心者 (1)

〜 潜れない人の戦略 〜

2010.10.10

  

 

 潜ってから壁を蹴れ

伏し浮きに苦労する選手が多い中、

『もぐれません』
『沈めません』

という、うらやましい初心者が、たまにいる。

 

一般的な初心者が悩む、

『沈む。溺れる』

という状況とは真逆の状況で悩んでいる。

 

表面に現れる結果は対極にあっても(沈むと、沈めない)、同じ水泳初心者』

である所が、

『物事の左右両端は、裏で繋がっている』

という世の中のフラクタル性(相似性)を現していて、面白い。

 

【1】 最初に水中に潜り
【2】 深い位置から壁を蹴ってください。

 

 

■ 潜れない人のやり方

私はこれまで、『潜れないという初心者の悩み』は、言葉でしか聞いた事がなく、その状況を想像する事ができなかった。

 

しかし先日プールで、『潜れないという悩みを持った人のやり方』を見て、

『持っている視点(見るポイント)の違い』と、『その視点から導かれる戦略の違い』によって、『結果が大きく左右されてしまう世の中の仕組み』

を強く感じた。

 

素人の壁の蹴り方

 

『どうしても潜れないんです』

と言いながら、

『潜らないで壁を蹴る。一度も潜るそぶりすらも見せず、最初から水面ギリギリに足を付いた挙句、下ではなく、そのまま前に蹴り出す』

 

のを見た時、

『経験者の視点』と『経験がない人の視点』が、これほどまでにもかけ離れている事に、私は驚いた。

 

【簡単な方法】 潜って壁を蹴る。
【難しい方法】 
水面で壁を蹴って、その後に潜る。しかも、壁を蹴り終わった後に潜り始めるのはもっと難しい。

 

の『2つのやり方が、現実に存在している』のに、

『初心者は、壁の蹴り方が下手で、飛び出しに勢いがない』にも関わらず、

『初心者は、水の扱い方が下手で、体の深さや、水をコントロールできない』にも関わらず、

競泳選手ですら難しくてうまくできない難しい方法を、何の疑いも持たずに、わざわざ採用し、

『水面ギリギリからスタートしていて、潜れない』と、ずっと悩み続ける。

 

おそらく、『スタート台から飛び込むようなイメージ』で、水中に潜ろうとしているのだろうが、

水中からスタートするのに、『大きな位置エネルギーがあるスタート台』から飛び込むイメージを使って潜れるはずがない。

 

『発想』という出発点を間違えてしまうと、どんなに立派な人でも、良い結果に結びつける事が出来なくなるのだから、

『物事を捉える視点』と『発想(戦略)』は、非常に重要な事がわかる。

 

 

■ 選手のやり方

選手の動きを、見るべきポイントを押さえてしっかり観察すれば、

『プールの底を軽く蹴って勢いをつけてから潜り(深いプールなら壁を利用して勢いを付けて潜る)、水中に体が沈んでから、壁を蹴っている』

事を容易に見て取れる。

 

『同じ選手の動き』を見ても、切り口(見るポイント)が違うと、見えるものも見えなくなる。

 

選手が水中からスタートする時

【1】 上に軽くジャンプして勢いを付ける。
【2】 壁に向かってお尻をバックさせながら沈んで壁に足を着き、
【3】 バックして来た反動を利用して、まっすぐ強く蹴り出す。

 

もちろん選手は、『体で感じる水の感覚』でなんとなく自然に動作しているだけであって、この動作は、理屈ではない。

※※ 備考 ※※
一応、理屈はありますよ。

スタート台から飛び込むほどの位置エネルギーは作り出せないが、軽くジャンプして水上に出た上半身の位置エネルギーを利用して、水中にバックしながら潜って、壁を蹴る。

バックしながら潜る事で、効率の良い屈伸動作が行えて、強く蹴り出せる。

(陸上で行う垂直ジャンプや、バレーボールのスパイクと同じで、しゃがみ込んだ反動で蹴り出した方が強く蹴り出せる

遠くまで潜れるように(エネルギーをベクトル的にまっすぐ、一番効率よく利用するために)、潜りたい位置まで潜ってから、壁をまっすぐ蹴る。
※※※※※※※※

 

 

体重が100kgを越えるほどに太っていない限り、これで潜れるようになったはずだ。

(太り過ぎると、そもそも、人間としてのまっとうな動作が出来なくなるという事もあるが、脂肪は油なので水よりも軽く、そのせいで、あまりに太り過ぎてしまうと浮力が大きくなり過ぎて、まったく潜れなくなる)