プールへ行こう! (2)

〜 スタイルへの効果 〜

2010.05.15

  

 

【1】
水中は、陸上よりエネルギーを多く消費する

【2】
水中は、水圧で体を締め付けられる

【3】
水泳が、肩幅を広くしてしまう心配はない

 

 

【1】 水中は陸上よりエネルギーを多く消費する

プールの水温は30度前後で、体温よりかなり低いせいで、エネルギーを多く使う。

 

子供の頃、プールで遊んだ日は、とても疲れて早く寝た記憶があるのはそのせいだ。

 

魚のような変温動物では、水温が上がれば体温も上がり、水温が下がれば、体温も下がる。

ところが人間は、恒温動物で、体温を常に一定に保とうとする動物だ。

 

つまり、水温30度のプールに人間が入ると、プールの水によって体温が奪われる。

 

魚なら、水温に合わせて体温も下がるが、人間は体内のエネルギーを多く燃やして、体温を36度前後に保とうとする。

(焼却炉に水をかければ火が消えてしまうので、火が消えないようにするには、燃料を多く使って炎を維持しなければならないのと同じ原理)

 

だから、陸上でじっとしているのは疲れなくても、プールでは疲れるのだ。

 

『気温30度だって、体温より低いじゃないか!陸上だって、体温を空気に奪われるから、水中も陸上も同じじゃないか!』

という理屈は間違いだ。

 

水は空気よりも、25倍も熱を伝えやすい。

そのため、同じ30度でも、陸上にいる時よりも、水中にいる時の方が圧倒的に体温を奪われやすい。

(正確には、水と空気の、熱伝導率熱量の違いで、気温35度は暑くてたまらなくても、水温35度の風呂はぬるく感じるらしい)

 

体外に熱を奪われやすい分、体内で多くのエネルギーが必要になり、水中では陸上よりもエネルギーを消費しやすい。(結果的に、水中は疲れる)

 

科学的には多少語弊もあると思うが、イメージしやすいように、あえて例えれば、陸上で30分座っているよりも、水中で30分立っている方が、脂肪が多く燃える。

 

 

ただし、水泳では、"ガリ痩せ"はしない。

『体温を奪われやすい』という環境に適応するため、体がある程度、脂肪を残そうとするためだ。

 

実際、以前、オリンピック日本代表選手の平均体脂肪率が新聞に出ていた事があったが、陸上競技の男子では、体脂肪率10%を大きく下回っているにも関わらず、競泳男子では、15%前後であった。

競泳の場合、『体温を奪われないようにするため』や、『浮きやすい体を維持するため』に、適度な脂肪量を体が求めているからだ。

 

ただ、テレビに映る競泳選手の体を見れば分かるように、男子選手の体脂肪率15%でも、一般人に比べれば、脂肪は十分少なく、私個人の感想ではあるが、むしろ適度な脂肪量だと思う。

 

水泳は、拒食チックにガリ痩せしたい女性や、ボディビルチックな"見せる筋肉"だけを目指す男性には向かない。

 

 

【2】 水中は水圧で体を締め付けられる

平地では、1気圧の力で、体を空気が押している。

 

1気圧とは、縦横10cmの正方形に100kgの重さが、かかった状態の事で、たった、10cm四方に、太った大人1人が乗っかっているのだから、かなりの力といえる。

生まれた時からこの圧力で生きているので、普段は意識していないが、体には常に、意外に大きな力がかかっている。

 

水中では、空気が水面を押す1気圧の力に加えて、水の重さ(水圧)がかかってくる。

その水圧は、水深10Mの所で、1気圧と同じになり、つまり、水深10Mでは、陸上の2倍の力がかかる事になる。

(もちろん、10Mも潜る事はないから、プールで実際にかかる水圧は、せいぜい陸上の10%増程度だが、10%増とはいっても、それは10cm四方で10kg多く圧力がかかる事を意味しているので、そう考えると、結構な違いだ)

 

水中は浮力のせいで、体が軽くなる事から、

『水中は、体が開放されて膨らむ』

かのような気がするが、実際は逆で、水圧によって体がさらに押さえつけられる。

『水中に深く潜ると、耳の鼓膜(こまく)が痛くなる』、あれだ。

 

つまり、水中は浮力のせいで、体にかかる重力が小さくなる分、関節への負担は小さくなっても、

体は逆に、水圧で押し潰されて小さくなっているわけだ。

 

しかも、陸上では重力のせいで(自分の体重のせいで)、左右からの空気の圧力よりも、上から下へは大きな力がかかるが(つまり、立っていれば背が縮む)、

水中では、浮力のおかげで、重力が相対的に小さくなっているので、体がどの方向に向いていても、均等に圧力がかかる(つまり、背が縮まない)。

 

どの程度かは知らないが、実際にプールから上がった直後は、水に入る前よりもウェストが細くなっているらしい。

(もちろん、ウェスト以外も細くはなるだろうが、腕や足は筋肉が主体なので、空洞のお腹よりも効果は小さいと思われる)

 

もちろん、水圧でウェストが細くなっても、しばらくすれば元に戻るはずで、その効果は一時的なはずだ。

 

ただ、『お腹を揉むと、細くなる』と、エステで高いお金を出したあげく、数時間後に元通りに戻ってしまうよりも、スポーツクラブの会費の方がずっと安く、また、泳ぐ(運動)という明らかに健康的な戦略の方が、エステのいかがわしい"一時的な見せ掛け効果"よりも、ずっと健全だ。

(エステによるリラックス効果までをも否定しているわけではない。対費用効果や、運動効果によるプラスαの部分をどう捉えるべきかを、私は述べているだけだ)

 

 

【3】 水泳で肩幅は広くならない

夏が近づくと、男性雑誌には、

『水泳で、スイマーのような逆三角形体型を手に入れよう』

といった特集をよく見かける。

 

『逆三効果』を期待して、春先から慌ててプールに通いだした男性には申し訳ないが、水泳で肩幅が広くなる事はない。

 

『スイマーの体は、実際に逆三角形じゃないか!』

はい、逆三角形です。

しかし、それは、体が第二次成長期にある中、高、大学生の時に、水泳をしていたからです。

 

体の成長が止まった大人になって水泳を始めても、

『大人になったら、背が縮む事はあっても、背は伸びない』

のが一般的である事から分かるように、残念ながら、人間の骨格は、もう、成長しない。

 

ただし、大人の身長が伸びなくても、トレーニングによって筋肉は太くなる。

 

競泳選手とボディビルダーの体を、よく見比べてみると分かる。

同じ逆三角形の体でも、何か微妙に違うはずだ。

 

『競泳選手の広い肩幅は、骨自体が横に広く成長しているために、逆三角形にみえる』
(腕自体が、より外側に付いている)

 

『しかし、大人になって始めたトレーニングで作った逆三角形は、腕の筋肉を太くする事で逆三角形に見えるだけで、鎖骨は横に広がっていない』
(腕の付け根は、普通に首のそばに付いている)

 

おそらく、

『水泳は肩幅が広くなるから嫌だ』

と思っている女性は、多いだろう。

(ちなみに、競泳をやっている男の多くは、肩幅の広い女性に色気を感じる事はあっても、マイナスのイメージはないはずだ。広い肩幅と逆三角形の体は、女性であっても、魅力のひとつに見えるので、競泳選手である私には、何ゆえ、女性が肩幅を嫌うのか良く分からない。バブル期のボディコンに、アメフト選手バリの肩パットが入っていた恥ずかしさからだろうか? (^.^))

 

確かに、子供の頃から水泳を始めた競泳選手は、理由はよく分からないが、肩の骨格自体が広くなってしまう。

しかし、大人になってしまうと、手も、足も、身長も伸びない事から明らかのように、肩幅も広くはならない。

肩幅だけが大人になっても成長するなんて話の方が、私の自論よりも、非科学的で、非現実的だ。

 

もちろん、競泳選手並に強い強度で泳ぎ込めば、泳ぐだけでも、肩幅が広く見えるほどに、筋肉が発達する。

しかし、そんなハードなトレーニングをしようと思っている人が、ここを見ているだろうか?

 

仮に、百歩譲って、トレーニングによって肥大化した筋肉によって肩幅が広くみえるようになっても、運動をやめれば筋肉はまた細くなり、元に戻る。

子供の頃から続けてきた競泳選手のように、引退後も肩の骨がそのままで、肩幅が広いままになってしまう心配は、まったくない。

安心して、水泳に取り組んで大丈夫だ。保障します。

 

『え〜〜水泳では逆三にならないのぉ〜』

と、がっかりした男性のために付け加えると、水泳でも強めの練習を続ければ『筋肉で』、肩幅が広くなる事はある。

筋肉を太くするのは、水泳よりも、ベンチプレスや、懸垂をやりまくる方が負荷が大きく効率的だが、負荷の大きい筋トレは、関節を痛めるなどして、練習を続ける事自体が出来なくなってしまうリスクがある。

一方、水泳は怪我をする事が少ないため、結果的にトレーニングを続けられて、逆三角形体型を手に入れられる可能性が高いと言える面もある。

 

現実路線としては、ウェイトトレーニングの強度を70%くらいに押さえ、代わりにプールで泳げば、水泳は筋肉をほぐす効果もあるため、怪我のリスクを下げつつ、効率良く筋肉を肥大化させる事ができるのではないかと思う。

 

いずれにしても、大人になってから始める水泳は、逆三体型を作るためにやるのではなく、

『水中運動は、関節への負担が少なく、体にやさしい運動である』

『室内プールは紫外線もなく、肌へ良い効果がありそうだ』

といった面を動機とする方が、誤解が少なく、より正しい。