腰痛 (1)

〜 腹筋強化の嘘 〜

2008.11.01

  

 

私は中学生の頃から腰痛を持ち針治療に通うようになり、30歳を超えて椎間板ヘルニアを経験したが、腰痛で整形外科に行くと決まり事のように言われたのが、

「腹筋を鍛えなさい」

だ。

しかし、私は競泳選手であり、腹筋、背筋など小さい頃から毎日鍛え、

「これ以上どうやって鍛えろと言うんだ」

というほど、鍛えてきた。鍛えているにもかかわらず、腰痛は年齢とともに悪化し、30歳を越える頃には、年に1〜2回はぎっくり腰をやるようになっていた。

つまり、「腰痛患者は、腹筋を鍛えるのが良い」というのは嘘だ。経験的に嘘だ。

おそらく、「腹筋を鍛える事が腰痛に良い」という医学的なデーターなどないはずだ。

「腹筋を鍛えたら腰痛が大きく軽減した」とか「普段から腹筋運動をしている人は、腰痛になる人が少ない」とかそんなデーターはどこにもないはずだ。「腰痛患者は腹筋を鍛えろ」という話とは正反対に、そんなデーターは見た事がない。本当は、単なる机上の空論で、

「腹筋を鍛えて、鍛えた強い腹筋で上半身を支えられるようになれば、腰骨に上半身の重みが乗らないようになって、腰痛は改善するんじゃないかというイメージ

でしかないはずだ。医学的データーなどは本当はなく、イメージだけの空想でしかないはずだ。

私の経験上、「腹筋の強さ」は腰痛とほとんど関係がない。「腹筋の強さ」ではなく、

「腹筋の使い方」

が腰痛と大きく関係している。

「腰骨で上半身を支えて腰椎に負荷がかからないように、腹筋を鍛える

のではなく、

「腰骨で上半身を支えて腰椎に負荷がかからないような腹筋の使い方をする

のだ。

もう少し砕いて言えば

腹筋や骨盤を自分の意思で動かせるか?正しい姿勢を知り、その正しい位置に骨盤を置くために腹筋を動かせるか?

という事が腰痛と関連がある。腹筋を強度的に鍛えるのではなく、「腹筋」あるいは「骨盤」を意図したように動かせるように鍛えるのだ。

腹筋だけでなく腕や足の筋肉でも同じだが、いくら重たい物を持ち上げて鍛えようとも、筋肉は太くなるだけで動くようにはならない。むしろ、直線的な単調運動が強化され、しなやかで細やかな動きは出来なくなっていく。

腰痛患者は、腹筋を強化するトレーニングを積むのではなく、腹筋の使い方をトレーニングする必要がある。

上体を上げ下げする腹筋強化トレーニングは、ほどほどすればよいだけで、そんなものを鍛えてもあまり意味はない。むしろ腰に負担がかかって悪化させる事の方が多いくらいだ。

腰痛は激痛期はひたすら休むしか他に方法はない。

しかし、物事は何事も同じだが、「守り」と「攻め」のバランスを取る事が必勝法だ。守るだけでも、攻めるだけでもダメだ。

つい激痛の恐怖から、腰を守る事にだけ注力してしまうが、腰痛を起こさない体を手に入れるために「攻めの回復」を模索する必要がある。

「守り」の方は、腰痛患者なら誰でも十分に取る。例えば、「医者に行く」とか「洗面台に向かう時、前傾しない」とか「くしゃみをする時にはどこかに手をつく」などだ。いちいち解説されなくても勝手に体が防御機能を機能させてくれるようになる。

しかし、攻める方は難しい。腰痛の恐怖があるので、出来るだけ腰を使わない方向に向かってしまいがちだ。

しかし、守っているだけではジリ貧だ。どうにかして攻めて、状況を好転させなくてはならない。

私は20年近く守りの姿勢で来た。腹筋背筋などの筋力トレーニングは競泳の都合上やってきたが、それ以外の面では常に腰は守ってきた。

守った挙句、行き着いた先が、椎間板ヘルニアだった。

「20年も人一倍、腰を守ってきて、結局これかよ!激痛かよ!」

私は頭に来て、攻める事にした。守ってダメなら、攻めてやれ。攻めたら、腰痛は大きく改善した。

守っているだけではダメだ。

現在、ぎっくり腰は椎間板ヘルニア以来3年以上起こしておらず、季節の変わり目に多少の違和感は出て注意は必要なものの、トイレにも行けなくなるような事は一度も起こしていない。

何よりも、腰への不安が激減した。

椎間板ヘルニアに関連する遺伝子のひとつが発見されている事からも分かるように、遺伝的に腰痛を起こしやすい体質はあり、腰痛は一生の付き合いだ。

「腰痛を知らない人の腰」のような完璧状態になる事はないが、日常さほど気にする必要のないレベルで付き合っていく事は十分可能だ。

しかも、「腰痛持ち」も悪い面ばかりではない。常に腰に気を配り、自分の体の内側に意識を向ける事で、体全体の健康にも目を向ける事になり、結果的に"より健康"でいられる可能性は大きい。

腰痛と付き合うには、守りだけではダメだ。腰痛に対してもっと積極的に攻める姿勢がなくてはならない。

布団や椅子といった自分が使う道具を変える事や、整体や針治療もそれなりに効果はあるが、自分の体内の問題に対し、外部のものだけで何とかしようという考え方自体が甘い。

もっと本質に自ら直接アプローチをかけないと効果は薄い。

自分の体内の問題には、自分自身の体に積極的にアプローチをかけなくてはならない。自分の体を守るだけでは、虚弱化して劣化していくだけだ。

実際、守った挙句私の行き着いた先は椎間板ヘルニアだ。

私は攻めた結果、20年の腰痛の痛みから、日常生活には大きな不便がないレベルにまで解放され、今でも年単位で見れば明らかに腰痛が改善している。

私が腰痛に対して取った攻めの対策で大きく効果があったものは

1. 股関節をやわらかくした
2. 「まっすぐ立つ」の正しい「まっすぐ」が作れるようになった

の2点だ。