平泳ぎのタッチ (2) 〜 タッチが合わない場合 〜 2008.05.01 |
||||
「頭を突っ込みきった瞬間に、タッチ板に到着」 すれば良いが、いつも都合良く、ぴったりタッチが合うわけではない。 しかも、古い時代のプールでは5Mラインが引いてあり、5Mラインの通過感覚でストローク長を無意識に調整してタッチを合わせやすかったが、最近のプールには5Mラインがない事が多く、昔よりタッチを合わせずらい。 (逆に言えば、5Mラインのあるプールなら、レース前にその事を確認し、ラインを利用してレースをすれば有利になる。) 調子が悪い時ばかりタッチが合わないわけではなく、調子が良すぎるが故に、いつもよりストローク長が長くなって、逆にタッチが詰まる事もよくある。 特に両手を同時に回す平泳ぎとバタフライのタッチは合わせずらい。 タッチが合わない状況を考えると
・ 流れたタッチ の2パターンの状況が起きうる。 つまり、タッチが合わない時には、「流れた方が良いか?詰まった方が良いか?」という事だ。 結論から言えば、 「ゴールタッチでは、詰まったタッチより、流れたタッチの方が良い」 のである。 詰まったゴールタッチになったにもかかわらず、頭を突っ込んでもしょうがない。 なぜなら、頭を突っ込みきる前に、タッチ板に手の指が付いてしまうからだ。 従って、「詰まったゴールタッチ」に「頭を突っ込んでタッチする効果」はない。 また、「ターンのタッチ」と「ゴールタッチ」の時には、下記のような一般的な方向性がすでに言われている。 「ターンの時は、反転する力が必要なため、"もうひとかき"かいて、詰まり気味に入る方が良いし、タイム的にも速い。 ゴールタッチする時には、タッチ板に触れるだけの勢いで十分なので、そのままストリームライン状態を維持し、流れたタッチでゴールする方が、もうひとかきするよりタイム的に速い。」 この事からも、ゴールタッチが合いそうにもない時には、 「"もうひとかき"せずに、そのままタッチに流れ込む」 方がよい。 理論的には流れたゴールタッチの方が良い事は理解できたであろうが、現実問題では、選手の心理面もよく考慮しなければならない。つまり、 「タッチが流れてしまうと失速するため、選手は反射的に失速を嫌って、つい"もうひとかき"してしまいがち」 なのだ。 しかし、"もうひとかき"するよりも、そのまま流れてゴールタッチした方がタイム的に速いので、タッチ動作に入る前に、 「流れそうなら、そのままタッチするぞ」 と心の準備をしておかなければならない。 「なんとなくタッチが流れて、結果的に速かった」 という事は、選手の心理的状況からして、起こりにくい。 「なんとなく」タッチすれば、圧倒的に「詰まったタッチ」になりやすい ので注意してほしい。 ただし、タッチのタイミングを気にするあまり、早い段階から壁を見てタイミングを取るのは良くない。 ゴール付近では疲労から、ただでさえ、アゴが上がってフォームを崩して失速しがちである。その上、 タッチのタイミングを計りすぎて、例えばゴールの10Mも手前から壁を見ていたのでは、タッチのロスよりも、アゴが上がった状態で10Mも泳ぐ失速効果の方が大きくなってしまう。 また心理的にも、タッチを気にしすぎると集中力をゴール前に切らしてしまってタイムが落ちる。 泳ぎにとってベストなフォームでギリギリまで泳いで、最後の2ストローク程度でタッチを合わせられる練習を普段からしておく必要があり、また、レース前にはその事を忘れないように意識しておく必要がある。 私の個人的なテクニックではあるが、ゴールを見ずにレース中に自分の泳いでいる位置を、"通常の泳ぎの視線"の中で計るために、レース前にプールの底の鉄板などを確認し、レースで利用できる目印を確認しておく事も、レースを有利に運ぶテクニックのひとつである。 排水溝の蓋のようなものであれば、全コース共通にあるが、それ以外にもプールの底にはいろいろ目印になる変化があり、コースによって目印になりうる物が、あったり、なかったりする。 例えば、コースによっては、プールの底に小さな丸い金属の蓋などがあったりする。 その位置が10Mにあれば、その金属の蓋を通過した時に、残り10Mである事が分かる。 このように、自分の泳ぐコースのクセをアップの段階で確認しておけば、5Mラインがなくても、自分の泳いでいる位置を確認するために、いちいちフォームを崩してまで周りを見る必要がなくなる。 さらに、こんな細かい所まで手を打っている選手なら、他にもたくさんの細かい手を打っていて自分に有利なレースを展開できるので、周りの選手が自分のレースに引き込まれて、勝利に導きやすくなるという二次作用もある。 次項では、タッチが流れた時の失速を抑える、グレーゾーンテクニックを説明する。
|
||||
|
||||