平泳ぎ (9)

〜 スライド泳法 〜

2008.10.15
大幅修正 : 2011.04.10

  

 

新型のフラット泳法では、水面を滑る感覚がある。

泳ぐという感覚よりも、ミゾオチでスライドして水面を滑る感覚に近い。

 

この『スライドする感覚』を、映像で見る事が出来る。

映像では、『プル動作で発生した渦』がバスケットボール大で、モヤッと写っている。

 





2001年福岡世界水泳 スロードノフ選手

 

このモヤッとした渦は、実際に体の皮膚で感じながら泳ぐ事が出来て、バランスボールの上を滑り出されるイメージに近い。

 

ただし、陸上でバランスボールの上に寝転がると、重力に逆らわなければならないために体をエビ反らせてしまうが、

水中は浮力によって無重力なので、エビ反る事はないし、エビ反っちゃったら、それは旧式のモーターボート泳法だ。

 

『水中の無重力状態』を考慮してイメージすれば、回転するローラーに吸い出されていくイメージに近いといえる。

 

具体化した『水面を滑るイメージ』

 

 

新型の『アゴの前で、肘を開いて閉じるだけのプル』は、カヤック泳法と同じ原理で、単に水を引っ掛けているだけで、プル動作で加速して進もうとする必要はない。

 

『プルで引っ張り、加速しようという努力』は、ムダになる可能性が非常に高い事は、

『このモヤッした渦をどう扱い、いかにうまくスライドして、水面を滑るように泳ぐか?』

を考えると、理解でき、

プル動作の後の水流が、スロードノフ選手と、北島康介選手でどう違って流れるかを見比べると、

『100Mで1秒の差が付く、2人の速さの違い』

が実感できる。

 

2001年福岡世界水泳 スロードノフ選手

 

2008年北京五輪 北島康介

 

この状態を分かりやすく捉えるために、『2人の泳ぎが同じだと仮定』して模式的に現したのが下図だ。

 

模式図

 

スロードノフ選手は、旧式の『長く引っ張り、胸の下に抱き込むプル動作』を使っているせいで、バランスボールが完全に太ももにぶつかってしまい、この瞬間、カクッと減速する。

 

一方、『アゴの前で肘を開いて閉じるだけの新式 コンパクト プル』を使う北島康介選手は、手を引っ張らない分、バランスボールが太ももにぶつからず、回転するバランスボールの上を太ももがスムーズに滑り出されていく。

 

映像として確認すれば、スロードノフ式の泳ぎが『カクッと減速している』事は容易に分かるが、泳いでいる選手自身の感覚では、この

『蹴り出しの直前に、カクッと止まる感覚』

が、

『キックのための溜め動作。このカクッて感覚は、強いキックが打ててる証拠』

勘違いしてしまうため、注意が必要だ。

 

『太ももに水がぶつかる感覚』『キックを溜めているつもり』、それは、減速のサインだ。