平泳ぎ (21)

〜 泳ぎの完成イメージ 〜

高橋大和
2008.10.31
一部加筆 : 2009.12.10

  

 

旧型泳法と新型泳法では、脳で感じる苦しさの質が違っている。

 

旧型泳法では、「うーん」とがんばる苦しさだ。すごく高い所に置いてある物(目標物)を見ながら、「うーん」とがんばって背伸びをして取ろうという苦しさだ。目標物を見ながら取ろうとするから、モーターボートイメージのようにお腹が出て、腰が反る。すごく高い所の物だから、手先足先に力が入る。

新型泳法は違う。少し高い所にある目標物の位置を頭で予想しながら、手を伸ばして探す苦しさだ。目線はむしろ下に向けたまま、手の感覚だけで高い所にある目標物を探している苦しさだ。だから、腰は反らずにお腹がへこみ、背中側がまっすぐ伸びる。少し高い所の物だから、手足には若干の余裕がある。

 

脳の感じる苦しさとしては、旧型が「がんばる泳ぎ」で、新型が「がまんの泳ぎ」だ。

旧型のがんばる泳ぎでは、手先足先の筋肉が苦しくて(疲れて)動かなくなって泳げなくなってくる。

新型のがまんの泳ぎでは、手先足先の筋肉に余裕を持たせたまま動作する代わりに、呼吸が苦しい。

なぜなら、ミゾオチを押し上げるようなお腹の筋肉の使い方をするからだ。

 

新型泳法は、ミゾオチを内側に押さえ込んだまま泳いでいるので、肺が圧迫され、呼吸が苦しい。

「ミゾオチを押し上げる力」と「息を吸い込むために横隔膜を下げようとする動き」が相反しているためだ。

そのため新型泳法では、旧型泳法と比べて浅い呼吸しか出来ないので、苦しい。

 

新型泳法では、手足の動作に余裕がある代わりに、後半になればなるほど、この浅い呼吸が苦しくてたまらない。

苦しさに負けてお腹側を緩ませると、腰が反り、旧型の泳ぎに戻ってしまう。

 

旧型泳法では、後半まで手足の筋肉が動くようにトレーニングしていた。

新型泳法では、後半まで呼吸が持つようにトレーニングする必要がある。

 

この違いが、「がんばる苦しさ」というより「がまんする苦しさ」なのだ。

 

この「がまんの泳ぎ」と、これまで説明してきた「プル/キック直接前進」「トルネード効果移動」を総合して泳ぎを完成させたものが以下のサイクルだ。

 

図 21-1 (新型泳法完成イメージ図)

 

これは、あくまでイメージ図だ。肘と膝を水面で前後に滑らせて泳ぐイメージの模式図だ。

「水面」と「水面からほんの少し下がった所」の非常に狭い間で、肘と膝を前後させて泳ぐイメージだ。

 

「肘と膝を前後させる感覚」は、伸ばした腕の肘に肩のラインが近づき、引き付けた足の膝の位置から上が前方に移動する感覚だ。

 

イメージをもう少し実際の動作感覚に繋げたものが、下図だ。

 

図 21-2

 

もちろん、これは私の持っているイメージや感覚だ。

北島康介選手のようなトップ選手がどうイメージしているかは知る良しもなく、私のイメージが万人に当てはまるとも思えないが、自分の泳ぎを作る時の参考にでもしてもらえれば、それでよい。