平泳ぎ (1)

〜 21世紀版平泳ぎの見た目の特徴 〜

2008.10.01
大幅修正  2011.03.20

 

泳ぎのテクニックは21世紀に入り、『それまでの常識とは真逆』と言えるほど大きく変わった。

『平泳ぎの見た目』で違う所は、上下動する位置の違いだ。

 

『旧式の平泳ぎが腰』の所から上半身を上下動させていたのに対し、『21世紀版の平泳ぎはミゾオチ』の所で上下動させている。

 

2008年北京五輪100M平泳ぎ決勝

 

奥側が北島康介選手の呼吸の瞬間で、『ミゾオチ ー 骨盤 ー 膝』が一直線上にあり、呼吸の時にはまだ、足の引き付け動作も開始されていない。

 

これが、一昔前の泳ぎだと、こうだ。

 

 

パット見て分かるように、明らかに下半身が落ちている。

腰の所で上半身を上下させているから腰が落ち、腰が落ちるから足の引き付け動作も開始せざるを得なくなって、膝も曲がっている。

 

これが、スピードを大きく失速させている原因だ。

 

この違いは、『泳ぐ時の基本姿勢の違い』から来ていて、現在の泳ぎは、伏し浮き姿勢を基本姿勢にした泳ぎになっている。

 

 

1990年代までの旧式平泳ぎが、吊り上げ式モーターボートイメージ泳法であったものが、

21世紀版の新型平泳ぎでは、伏し浮き姿勢を応用してフラットに泳ぐようになったのだ。

 

 

『旧型の平泳ぎでは、モーターボートをイメージして、腰を反り上げて泳ぐ』ため、どうしても腰が水面下に落ち込んでしまい、

さらにそれをカバーするために、キックを斜め下に蹴り下ろしてお尻を引き上げていたが、この方式では水流を大きく乱す事は避けられなかった。

 

この動作支点の違いを体内の感覚から捉えると、下図のようになる。

 

 

このストローク方式の差は、単なる『抵抗の差』を生むだけではない。

『旧式で発生していた腰の上下動が、新型では腰の前方スライド移動に使われている』という『推進ベクトルの向きの違い』をも生む。

 

 

ここで、上下動の話がどうしても理解できない人たちがいると思う。

『呼吸動作で上体を高く起こし、その位置エネルギーを利用して前方に突っ込んで推進力を得る』

と、まことしやかに語られていた1990年代の理論が頭をよぎり、

『フラットに泳ぐなんて、古臭い泳ぎだろ?波のようにウェーブしながら進む方が速いんだぞ!』

といった具合に、納得できない人たちだ。

 

次項では、「位置エネルギー利用理論」が物理法則を無視した嘘理論であり、フラットに泳ぐ理論がどのように優れているのかについて述べる。