学校水泳 (7)

〜 背泳ぎのキック練習 3 〜

高橋大和
2009.09.01

 

背面浮き」が出来るようになり、「足をまっすぐ伸ばしたキック」が打てるようになれば、背泳ぎのキックは完成しており、子供は「背泳ぎのキック」が出来るようになっている。

 

図 7-1

 

図 7-1の左側のように、選手級の背泳ぎのキックが打てれば理想的だが、泳げなかった子がやっと成長してきた段階では、右側のように下半身が沈んだ状態でしか出来ないはずだ。

 

しかし、それで十分だ。「お尻」や「太もも裏」、「ふくらはぎ裏」に軽く補助を入れれば、下半身が浮いてくれば十分だ。

下半身が沈んでいようとも、このままの姿勢で25Mを楽にクリアできる。50Mだっていける。

 

「自分は泳げない」

と思っている"泳げなかった子"が、どんな姿勢であれ25Mを泳げれば、

「自分は泳げる」

という確証を、無意識に持つようになる。

 

体の動作は脳が制御しているため、脳みそが「出来る」と判断できない動作は、当然、実際の体でも動かせない。

人間は、頭でイメージできた事ですら、すぐには体で表現できない。

ましてや、頭でイメージできない事は、限りなく100%に近い確立でうまくできない。

 

言い換えると、テクニックを身に着けるには、まず、本人の意識が正しい方に向いている必要がある

この段階で子供はやっと、「泳ぐ意識」を、理性ではなく、感覚として持てた事になる。

 

「意識」や「イメージ」も、テクニックの要素の中のひとつなのであって、体だけ動かしていれば、テクニックが手に入るわけではない。

 

ここまでの事ができないのに、いくらクロールを教えたって、不器用な子供は泳げるようにはならず、泳げるようになる前に、諦めてしまう可能性の方がグッと高くなってしまう。

 

ここまでの指導は、「4泳法の基礎の基礎」であり、「泳ぐのに必須なテクニック」である事を、よく認識する必要がある。

器用な子供には、どう教えても泳げるようになるが、不器用な子供には、シンプルな道順で、ワンステップずつ身に付けていかせる事が重要だ。