学校水泳 (2) 〜 背面浮き 1 〜 高橋大和 |
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泳げない人は、ほぼ間違いなく 「息継ぎが出来ないんです」 と言う。
(私は、これ以外の理由を聞いた事がない。もちろん、水が怖いとかそういう理由もあるが、ここでは、水恐怖症の面については扱わない。 従って、水が怖いとしても、「顔を水に付けられる」ところまでは、来ているものとして話を進める。)
確かに息継ぎは、カナヅチ者にとって一番難しい部分であり、非常に高い壁であるといえる。 なら、息継ぎするなよ
図 2-1
息継ぎさえしなければ、泳げるわけだ。うちの姪っ子なら13Mは泳げたわけだ。 息継ぎ動作が出来ないから、息が苦しくなり、泳ぐのを止めざるを得なくなるのだ。
だったら、背泳ぎはずっと顔が水面に出ているんだから、背泳ぎからやればいいじゃないか。
気付いてしまえば、当たり前の話で、母親の腹の中の記憶をすっかり忘れてしまって、水中での基本的な体の使い方すら出来ないカナヅチ者に、いきなり息継ぎもいっしょに教えちゃおうってんだから、そらブキッチョ者にいきなりクロールの訓練から入るちゅーのは、ずいぶんと無謀な話だ。
カナヅチ者に、 「泳ぐテクニック」と「息継ぎテクニック」 の2つを同時に教えるよりも、難しい「息継ぎテクニック」は後回しにして、とりあえず、水に浮く事を集中的に鍛えれば、ブキッチョ者でなくとも、ずっとトレーニングしやすいに決まっている。 (浮けるようになれば、進むのは何の努力もいらない。無重力の宇宙では静止する事の方が難しいのと同様に、水面に浮ければ、手足を適当に動かせば、勝手に進める。)
出来ない人間には、出来るだけシンプルに、出来るだけ簡単な方法で教えなくては、途中で自信をなくし、投げ出す可能性が高くなって当たり前だ。
ただ、「背泳ぎ」というと 「背泳ぎは難しくて出来ない。クロールより難しいじゃないか」 と素人は言いたくなるだろう。
そんな事はない。背泳ぎの方がずっと簡単だ。なぜなら 背泳ぎで浮く姿勢(以後、[背面浮き]と表現します)は、クロールを泳ぐ姿勢でもあり、バタフライを泳ぐ姿勢でもあり、平泳ぎを泳ぐ姿勢でもある。 背面浮きが出来なければ、クロールも、バタフライも、平泳ぎも出来ない。 クロールを練習するためにも背面浮きは必須の"基本中の基本テクニック"であり、何よりも先に真っ先に教える事である からだ。
「泳ぐ事」を考えるから、泳ぎが達者でない人たちにはイメージしにくい。 「走る事」、いや、脳梗塞か何かで歩けなった人のリハビリを思い出して欲しい。 赤ちゃんが歩き始める時期の成長を思い出してもよい。
リハビリでいきなり歩き始める訓練をするだろうか? いや、そもそも出来るだろうか?
まずは、車椅子から立ち上がる訓練から始めるはずだ。 なぜなら、歩くには歩くための姿勢が、まずは必要だからだ。
ヨチヨチ歩きの赤ちゃんが、まっすぐ立っていないからヨチヨチしている事を思い出せば分かるように、出来ることならまっすぐ立つ事が出来るようになる必要がある。 同様に、泳ぐには泳ぐ姿勢が必要なのだ。
姿勢を教える前に、その次のステップである「泳ぎ」や「歩き」や「走り」を教えても、動作として成り立たないのだ。
背面浮きは、 「胸を張り、体をまっすぐ伸ばす」 という「姿勢の基本中の基本」を容易に訓練する事が可能であり、最適な練習方法なのだ。
背面浮きは、「背泳ぎの練習」ではなく、「泳ぐ時の基本姿勢の練習」なのだ。
胸を張り、体をまっすぐ伸ばしたままなら、息継ぎ動作も出来るようになる。 「出来るようになる」というより、胸を張り、体をまっすぐ伸ばす姿勢が作れなければ、息継ぎ動作も出来ないのだ。
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