学校水泳 (11) 〜 手のリカバリー 〜 高橋大和 |
||||
泳げない子も8章までの訓練で、クロールはおおよそ出来るようになった。 ただ、やっと泳げるようになった子の泳ぎは不恰好だ。
見た目が不恰好なだけならかまわないのだが、イコール、苦しそうなはずだ。 「背面浮き式息継ぎ」を行って泳げるようになったとはいえ、何かおかしい。
それは、手のリカバリー方法(腕の回転方法)がおかしいからだ。
図 11-1
水泳素人は、腕のねじり方がおかしいから、手がうまく回転せず、結果的に、水面に対して体が立ってしまう。 体が立っているから、その分、体が沈んで、進まないし、息継ぎも苦しい。 (体が立つとその分、頭などが水上に出てしまって大きな重力を受け、体が重くなるなどして浮力が小さくなって沈んでしまう。その沈みを「手で水を押してカバーしようと、上から下に垂直に水を押し込んで」さらに体が立って、また沈むという悪循環が息継ぎが苦しい原因)
図 10-1の赤丸を見てもらうと分かるように、競泳選手は水泳素人とは逆に腕をねじり小指を先行させてリカバリーを行うのに、素人は親指(あるいは手の平)を先行させてリカバリーを行う。 (実際にやってみると分かるが、小指を先行させてリカバリーする方法では、頭が水面方向に突っ込まれるような力がかかるので、体を立てる方が無理が出てくる。そのため、結果的に体が水面に対してフラットになりやすい)
体の下から見た図の方が分かりやすい。
(腕のグレーは、後ろ側が前にきている事を表している) 図 11-2
両手をピーント伸ばした状態で、腰から頭の上に手を上げる時、素人は手の平を正面(「正面」とは「図10-2での正面」)に向け親指を上にして頭の上に腕を上げていく。 これは、ボールを投げる時と同じ方法で手を回している状態だ。
競泳選手は違う。競泳選手は、腕をねじって手の甲を正面(「正面」とは「図10-2での正面」)に向け小指を上にし、小指を上にしたまま、頭の上に腕を上げていく。 (もちろん、実際の競泳選手は、もっとリラックスした腕の捻りでリカバリーを行っているが、「泳げない子供」には出来るだけ少ない強制で、泳ぎを矯正させるために、動作の大げさな強制が必要だ。) これは、ボールを投げる時とは逆に腕をねじった手の回転方法で、手の甲にボールを乗せて投げるイメージと同じ腕の回し方だ。
確かに野球のボールを投げる時は、手の平にボールを握って、顔の前方にボールを投げるので、水泳素人の腕の回転のさせかたと同じ腕の振りでよい。 (ボールを投げる時、肘を曲げて投げる事から分かるように、この回転方法では素人ほど、どうしても肘を曲げたくなる。結果的に、プルの水中動作も短くなってしまい、ほとんど水を掻かずに手を戻そうとしてしまって、まるで溺れているかのような小さな泳ぎになる)
しかし、水泳の場合には、手の平の水を空中に放り投げたり、前方に投げるわけではない。 陸上に立った姿勢でやってみると分かるが、腕を伸ばして、単にグルグルと回転させるだけなら、図10-2の競泳選手的な腕の回転の方がスムーズに回転する。
「回転のスムーズさ」という面よりも、もっと重要なポイントがある。
上記で「ただし書き」もしたが、水泳素人のように親指を先行させると、リカバリー動作中に肘を曲げやすくなる(肘が下がる)。 そのため、図10-1のように、いかにも素人的なリカバリー動作に繋がって、体が立ってしまう。
ところが、小指を先行させてリカバリー動作を行うと、肘の屈曲可能範囲の都合上、手を曲げてリカバリーする方が、無理が出てくる。 つまり、"結果的"に肘(手)を伸ばしてリカバリー動作を行わざるを得なくなる。
子供に難しいのは、小指を先行させて回転させる腕のねじり方が、日常動作にはないので少し戸惑う所だ。 それでも、陸上で小指を先行させて腕を回転するやり方を何度か教えれば、おおよそできるようになる。 ※※ 備考 ※※ 「腕の回転のさせ方」が分かった所で、「背面浮き式息継ぎクロール」でやっと泳げるようになった、なんかまだおかしな泳ぎの子供を矯正する。
図 11-3
【1】 開始動作 【2】 プル動作 【3】 リカバリー動作
これを左右交互に繰り返せば、だいぶましなクロールにもなるし、背面浮き式息継ぎ動作もかなりスムーズに出来るようになるはずだ。 もちろん、足(膝や足首)もピーンと伸ばして、キックさせる。
|
||||
|
||||