クイックターン (3)

〜 回転軸の違い 〜

2010.12.10

    

■ 回転軸の違い

『右右 ターン』と、『右左クロス ターン』の速さの違いは、『回転する向きの違い』ではない。

 

『お尻(お腹)』を軸にして回転するか、『膝(膝裏)』を軸にして回転するかの違いだ。

 

小学生の頃に遊んだ『鉄棒遊び』で例えれば、『お腹まわり』か、『膝掛けまわり』かの違いが、イメージに近い。

 

 

 

この鉄棒遊びをイメージしながら読むと分かりやすいと思うが、

『ターンの速い選手と遅い選手の観察』と、『私自身の実際の動作感覚の違い』とを合理的に照らし合わせて、

『同じ位置から回転動作を始めたとしたら』

という仮定で思考実験した結果が、下の模式図だ。

(違いが分かりやすいように、あえて模式化した『模式図』であり、『実際のターンを見たまま写した図』ではない)

 

 

 

回転半径の違いによる回転スピードの違い』であり、

『足を持ち上げるターン』と『お尻を水中に転がり落すターン』による『回転方法の合理性の違い』であり、

『腰〜足先』180度回転させるのと、『膝〜かかと』90度回転させる違いであり、

『壁のそばか?遠くか?』の『ターンを開始する位置の違い(ターンを開始するタイミングの遅い/速いの違い)』

 

これらが、

『お尻に回転軸を置いた時』と、『膝に回転軸を置いた時』に大きなスピード差となってくる問題

に内在する根本原因だ。

 

 

『お尻を軸にして回転した時だけ、体が壁に近寄らずに止まってしまうように描くのはズルイ!』

 

と思うかもしれないが、実際に注意深く意識を向けてターンをやってみると、

『お尻を軸にすると、下半身の大回転でブレーキがかかり、膝を軸にした時の回転のように、壁に体が吸い込まれるようなターンはできず、壁により近づいてからターンを開始しないと、壁に足が届かない』

事がすぐに分かる。

 

逆視点で指摘すれば、

『膝を軸にしたターンが出来るようになると、今までよりも少し遠い位置からターンを開始しないと、回転動作後に体が壁に近寄りすぎてしまって、蹴り出しにくい』

事に、すぐ気付くはずだ。

 

つまり、ターンが下手だった選手が、このテクニックでうまくなった後は、壁との距離感が掴みにくい事を意味し、回転テクニック自体はすぐに手に入るのだが、

『今までは、泳いできたスピードを、回転するお尻(腰)でギュッと殺し、体を止めてターンしていた感覚

から、

『今後は、マットの上で、でんぐり返しをするかのように、壁に向かって体が前に進みながら回転するターン感覚

に修正する練習が、それ相応に必要になってくる。

 

 

 

■ レース映像で差を検証

このレースは、私のクイックターンが『まだ、クイックじゃなかった頃』の短水路100M自由形の映像で、この映像を見ていて、

『あ〜、俺のターンや、ターンが遅い他の選手たちは、回転の向きが違うだけじゃなくて、根底から違う』

と気付いた。

 

スタートの浮き上がり時も、比較対象にしている選手と私はほぼ同じで、最初の25Mのターンもほぼ同時に入った。

 

『右右ターン』を使う私は、壁により近づいてから回転を始めなければならないので、ここですでに若干遅れ始めていて、それが『水面に出ているお尻の具合』から見て取れるが、横3人ほぼ同時に回転を始めた。

 

ちょっとしたターンテクニックが違うだけで、ターンのたびにこれだけ大きく引き離されてしまう。

 

ターンを甘く考えていて、『日々の練習から、ただ漠然とターン』をさんざん行い、

『苦しい練習に耐えて、泳ぎの持久力のような微々たる差を縮めようとする戦略』にばかり努力する選手が、

『俺はがんばっているのに、結果が出ない』と、自分の才能を勝手に低く採点する根本原因は、

 

『結果が出ないのは、持って生まれた才能のせいではなく、視点の狭さ(少なさ)のせいで、深く考えもせずにクソ戦略を何度も繰り返し採用し続けるせい』

 

である事が実感できるであろう。