夢に向かう君たちへ



僕は高校時代、「自分の能力の限界だ」と思って引退した。

でもね、「限界」ってのは間違い。

高校生や大学生くらいの若さで、自分の能力の限界には到底、到達できない。

強い確信を持って、絶対に到達できない。

 

正しく、正確に理解してほしい。

僕が高校時代に感じた限界は、「それまでやってきたやり方の限界」だったんだ。

当時の僕は、「練習量を増やすと、体が強化されて速くなる」と思ってた。だから、ひたすらに練習量を増やし続けた。

でもね、そのやり方でそれ以上鍛えても、もう速くはならない。

 

中学時代までは、泳ぎ込んでれば誰だって速くなる。

中学までの練習で体や心肺機能は十分鍛えられちゃうから、鍛え残しは少ない。

95点を取れる得意科目に膨大な時間を費やして100点を目指すよりも、30点しか取れない苦手科目に手をつける方が容易に 点数は上がり、総合点を上げられるのと同じで、まだ手を付けてい分野に手を打つから、速くなる。

100点を狙うのはその後でいい。

 

「結果には、そこに至る過程(プロセス)」があるように、「成長にもプロセス」があって、高校生になったら、技術を磨くス テージにコマを進めなくちゃいけない。

体 → 技 → 心

高校レベルの戦いでは、もう「心肺機能の差」は競っていない。

「テクニックの差」を競っているから、テクニックに情熱を注いで取り組まないと、もう速くはならない。

 

当時の僕は心のどこかで、「技術的な事は、練習量よりも優先順位が低い」と甘く考えてたけど、体を鍛えるのは、速く泳ぐた めじゃないんだ。

泳ぎ込んで体を作ると、ストローク技術に取り組む土台が出来る。

鍛えた体をベースにしてテクニックを磨けば、君はもっともっと速く泳げるようになる。

 

いいかい。状況を正しく捉えないといけない。

君の能力は限界じゃない。

それまでのやり方を変える時期に来ているのに、今までの延長線上でがんばってるから記録が止まっているだけ。

 

大切な事だから、もう一度言う。

それ以上泳ぎ込んでも、君は速くならない。

 

人生には、過去の成功体験を捨てて新しく取り組み始めなければならない時がある。

勇気を出して、次のステップに踏み込みなさい。

 

その先も教えておくね。

泳ぎ込んで体を作り、技術を磨いても、いずれ次の壁が来て成長が止まる。

最後はね、自分の心と向き合わないといけなくなる。

認めたくない弱い自分にも目を向けなくちゃいけない時が必ず来る。

 

「心技体」は、極める事が難しい順に並んでるんだけど、自分と向き合う事は簡単じゃない。

山は頂上に近づくと急勾配になっていて、難しいバランス感覚を要求される。

競技の世界も同じで、心技体の3つを同時に、バランスを崩さないように磨いて、自分の体内に閉じ込めないといけない。

 

これが、本当に難しいんだ。

競泳人生で1度、多くても2度、成立するかどうかってところ。

それほど難しいんだけどね、心技体の微妙な歯車がガッチリ噛み合った時、すごい体験をする。

自分の能力が限界まで引き出されて、特別な感覚を体験する。

軽々しい言葉で言えば、Zoneに入るってところだけど、水泳の世界もまた、奥が深い。

自分で突き詰めて、君のスタイルを確立してほしい。


僕の中にある傲慢さが文章に出ているから、いつか書き直そうと思って一度リンクを切ったんだけど、僕が経験してきた事を正直 に書いてる。
トゲのある表現が出てくるけど本質部分は今でも正しいと思っているから、自分でうまく消化すれば、自分のスタイルを表現する 役に立つと思います。

http://www.page.sannet.ne.jp/yamato99/eidoraku/doraku_index.html

2017/01/01